Dynamicsの2つの“波”、いいとこ取りの統合へ(3/3 ページ)

» 2006年08月09日 07時00分 公開
[Chris Alliegro,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
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 BizTalkやSQL ServerといったMicrosoft製品で現在採用されているこうしたツールにより、開発者はあるプロセスにおける作業と情報の流れをビジュアルに表現でき、大抵の場合、開発者が手動で作成しなければならないコードが少なくなる。

 またWave Twoでは、そのほかにもVisual Studioベースの機能が提供される可能性がある。例えば、パートナーや顧客によるカスタムDynamics UIの作成(特定の職務に対応したUIの作成など)を支援するツールなどだ。これは注目すべき変更点だ。Wave Oneでは役割ベースのユーザーインタフェースが用意されたが、開発者が役割の作成やカスタマイズを行える機能は限られているからだ。

Microsoft、顧客、パートナーが直面する問題

 Microsoftは、MBSの製品ポートフォリオを合理化し、企業戦略に沿ったものにしようとする中で、矛盾する目標や競合する優先課題の両立を図らなければならなくなっている。一方では、コスト削減の圧力から、MBSは開発作業やチャネル対策の重複をなくす必要がある(ただ、この圧力は近いうちに純粋に社内的なものになる見込みだ。Microsoftは2006年7−9月期から、独立した事業セグメントとしてMBSの財務業績を報告することを取りやめるからだ)。

 他方では、MBSは今後も、収益と市場シェアを伸ばすとともに、どのベンダーもまだ主導権を確立していない市場でEpicorやOracle、Sageといったライバルが優勢に立つのを阻止したいと考えている。

 そのためには、同社は既存の顧客やパートナー、つまり4つのERP製品のいずれかを支持してきた顧客やパートナーの離反を招くことなく、新しい顧客とパートナーを引きつけられる魅力的な事業展開を計画しなければならない。少なくとも当面のところ、Microsoftは、重複する製品ポートフォリオを5年またはそれ以上維持する負担を負うことになるとしても、既存事業のビジネスチャンスを生かす方針のようだ。

 Microsoftとしては、既存の顧客やパートナーの手に余るような移行の問題を生じさせることなく、これらの両立を果たせれば理想的だ。しかし、新しい統合ERP製品への移行が、一部の顧客やパートナーにとってより困難なことは明らかだ。例えば、同社の次世代のERPアプリケーションのプログラミングインタフェースやライブラリ、ランタイムサービス、データモデルは、AXに最も近いものになりそうだ。Microsoftはこの新製品への移行支援ツールを提供するだろうが、GP、NAV、SLの顧客が、AXの顧客よりも移行に苦労するのはまず確実だろう。

 同様に、GP、NAV、SLの既存のプログラミングツールや言語、インタフェースを使って開発されたパートナーのアプリケーションや拡張は、新しい統合製品に対応させるには、完全に作り直さなければならないだろう。

 しかも、MBSの現行製品の販売やカスタマイズを得意としているパートナーは、そうしたスキルの将来的な有効性についても考えなければならない。GP、NAV、SLのプロプライエタリなプログラミングツール、言語、インタフェースを専門に手がけているパートナーは、新製品に移行する際に、猛烈な学習を強いられるかもしれない。

 そうしたパートナーがそのリスクを軽減するには、新しいWebサービスプログラミングインタフェースが導入されるのに合わせて、それらのノウハウの蓄積を進めるとともに、Dynamics製品の拡張では.NET言語とVisual Studio開発環境を重点的に活用していかなければならない。

 最近登場した一部の制度やプログラムは、AXが最も大事にされていることを示している。例えば、Industry Builder(2005年3月発表)は、パートナーが開発したAXソリューションに対するMicrosoftの認定/サポート制度だ。

 また、Microsoftが2006年2月にリリースしたSnapと呼ばれる4つのプログラムのセットでは、ユーザーはAXとDynamics CRM(MBSのCRMアプリケーション)のデータと機能にアクセスできる(Microsoftは、他のMBS製品がIndustry Builderの対象に加わる可能性や、MBSの他のERP製品に対応したSnapプログラムを提供する可能性を表明しているが、正式発表は行われていない)。

 こうしたことからすると、MicrosoftはMBSの全製品を2013年までサポートする考えだが、ERP製品ラインの一部では機能改良のペースが落ちるかもしれない。AXと新しい統合製品に最も重点を置いて研究開発が行われるようになっていくからだ。

 同様に、Microsoftはマーケティングとチャネル支援でもAXをますます重視していることから、AX以外のERP製品に力を入れているパートナーは、今後数年間でビジネスチャンスが減るかもしれない。

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