無視できないSalesforce.comの勢い――MSのCRM製品は勝負に出るか?(1/3 ページ)

MicrosoftのCRM製品のバージョン3.0は、マーケティング機能とサービス管理機能が追加され、ホスティングソリューションの普及促進を狙ったサブスクリプションベースのライセンスプログラムが導入された。だが、標準ではMicrosoftのERP製品の1つとしか連携しない。

» 2006年02月28日 07時00分 公開
[Chris Alliegro,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoft Business Solutions部門の中小企業向けCRMアプリケーション「Dynamics CRM」(旧称:Microsoft CRM)は、マーケティング機能とサービス管理機能を新たに搭載した最新バージョンが2005年12月にリリースされたことで普及が進みそうだ。最新バージョンではまた、セットアップが簡素化されており、Windows Small Business Server(SBS)2003に対応した新しいエディションが用意されているほか、CRMホスティングソリューションを提供するサービスプロバイダー向けのライセンスモデルが追加されている。だが最新バージョンでは、標準で連携するMicrosoftのERP製品はGreat Plainsだけに限られている。また、いくつかの要因から、従来バージョンからのアップグレードは容易ではなさそうだ。

初のメジャーアップグレードで機能を拡充

 2003年1月にMicrosoft CRM(MSCRM)として初めてリリースされ、2005年9月に改称されたDynamics CRMは、OutlookまたはWebブラウザをクライアントとして主要なCRM機能を提供する。例えば、営業や顧客サービスの担当者は、引き合いや、サービス依頼についての問い合わせなど、顧客とのやり取りを記録、追跡、更新できる。Dynamics CRMはこれまでに約6000社の顧客を獲得している。Microsoftは当初、2番目のメジャーバージョンを2005年第1四半期にリリースする計画だったが、後にリリースを2005年第4四半期に延期し、このバージョンをバージョン2.0ではなく、バージョン3.0とすることを併せて発表した。

 Dynamics CRM 3.0での最も重要な変更点には次のようなものがある。

マーケティングとサービス管理の新モジュール
 新しいマーケティング機能は、マーケティングキャンペーン、キャンペーンの対象顧客の絞り込み、マーケティング活動の計画立案と予算組みを支援する。また、Dynamics CRM 3.0で新たにサポートされたサービス管理機能は、機器の修理や設置などのようなサービスの販売、スケジューリング、実施を支援する。マーケティングとサービス管理は多くの企業の顧客管理プロセスの重要な要素であり、これらの機能の追加によってDynamics CRMの魅力が広がりそうだ。

セットアップの改善
 Dynamics CRM 3.0ではセットアップと導入機能が改善されている。Microsoft製品では、これらの機能が初期バージョンでは不十分で、後続バージョンで修正されるということがよくある。例えば、Dynamics CRM 3.0では、インストール前にセットアップユーティリティが、サーバおよびクライアントコンピュータがハードとソフトの最小要件を満たしているかをチェックし、問題点があれば報告し、対処方法を提案する。また、SBS 2003が動作するコンピュータへのインストールプロセスが簡素化されており、小規模企業にとってセットアップがしやすくなっている。より迅速で信頼性の高いセットアップが可能になったことで、小規模企業の間で一般的な懸念が緩和されそうだ。こうした企業は通常、導入作業に時間がかかることを嫌う。また、そもそも時間をかけるゆとりもない。

ユーザーインタフェースと連携機能の向上
 Microsoftは、WebクライアントやOutlookクライアントアドオンから利用されるDynamics CRMのユーザーインタフェースの改良を進めている。例えば、Dynamics CRM 3.0の管理者は、ユーザーの職務に基づいてユーザーの役割を定義することで、ユーザーが利用可能なデータや機能を指定できる(営業担当者が製品情報を読むことはできるが、その作成や編集はできないようにする、といったことができる)。さらに、Dynamics CRM 3.0ではExcelとの連携機能が向上しており、ユーザーはデータをExcelのピボットテーブルに直接インポートして、分析したりチャート化したりできる(別掲の図「Dynamics CRM 3.0のOutlookクライアント」で、Dynamics CRMのOutlookクライアントのスクリーンショットを示している)。

Dynamics CRM 3.0のOutlookクライアント
Dynamics CRMのOutlookクライアントにより、ユーザーはOutlookからCRMデータおよび機能にアクセスできる。このクライアントはOutlookの標準のフォルダツリーにフォルダ群を追加する。ウィンドウの左ペインの表示から分かるように、これらのフォルダからDynamics CRMのデータベース(SQL Serverをベースにしている)内のデータに素早くアクセスできる。この例では、ユーザーはReportsフォルダを選択しており、この操作により、Dynamics CRMに格納されているリポートの一覧を含むテーブルが右ペインに表示されている。右ペインでは、一覧表示されているリポートに対して操作を行うことができる。例えば、Excelボタンを押してリポートをExcelにエクスポートするといったことなどが可能だ。
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