無視できないSalesforce.comの勢い――MSのCRM製品は勝負に出るか？（3/3 ページ）

[Chris Alliegro，Directions on Microsoft]

貧弱なERP連携機能、厄介なアップグレード

　Dynamics CRMはMicrosoft Business Solutions（MBS）部門の製品だが、MBSのERP製品ラインとの連携機能は限られており、標準ではGreat Plainsとしか連携しない。Microsoftのパートナー数社がDynamics CRMをAxaptaやNavisionと連携させるユーティリティを提供しているが、ネイティブな連携機能が搭載されていないのでは、Dynamics CRMをこの2つのERP製品の約5万社の顧客に売り込むのが極めて困難なのは明らかだ。

　また、Dynamics CRM 3.0はセットアップが改善されているものの、従来バージョンの顧客は、いくつかの要因からアップグレードが厄介なことに気付くだろう。例えば、MSCRM 1.0からDynamics CRM 3.0にアップグレードすることはできない。MSCRM 1.0を利用している顧客がDynamics CRM 3.0にアップグレードするには、前もってMSCRM 1.2にアップグレードしておく必要がある。また、従来のMSCRMのOutlookクライアントは、Dynamics CRM 3.0サーバと互換性がない。このため、従来のMSCRMのサーバコンポーネントをDynamics CRM 3.0にアップグレードする場合には、MSCRMのOutlookクライアントもすべてDynamics CRMのOutlookクライアントにアップグレードしなければならない。さらに、MSCRM 1.2 SDKで作成されたカスタムワークフロールール（つまり、MSCRM付属のWorkflow Managerツール以外で作成されたルール）は、Dynamics CRM 3.0にアップグレードすることができず、作成し直す必要がある。また、従来のMSCRMで独自に作成または変更されたリポートを表示するには、Crystal Reportsのライセンスを取得するか、Dynamics CRMに付属するReporting Servicesエンジンに対応するようにこうしたリポートを作成し直さなければならない。

パッケージ構成と価格

　Dynamics CRM 3.0は、対応言語が従来バージョンの16から22に増えている。だが、個々の製品パッケージは1つの言語しかサポートしていない。Microsoftは次のアップグレードで多言語サポートを提供することを示唆している。Dynamics CRM 3.0は英語版が2005年12月の正式発表と同時に全世界で発売され、これまでにオランダ語、フランス語、ドイツ語、ロシア語の各バージョンが発売されている。他の言語のバージョンは2006年前半に発売される予定。

　Dynamics CRMの従来バージョンは6つのエディションがあったが、Microsoftはパッケージ構成を簡素化した。Dynamics CRM 3.0はProfessionalとSmall Businessという2つのエディションがあり、これらは基本機能は同じだが、サポートするユーザー数が異なっている。Small Business Editionは、SBS 2003 Premium Editionが動作する1台のサーバで利用するように設計されており、最大75人のユーザーをサポートする。Professional Editionは複数のサーバに導入でき、サポートするユーザー数は無制限。また、Professional Editionの利用には、SQL Server 2000またはSQL Server 2005、Exchange 2000 ServerまたはExchange Server 2003が動作するサーバへのアクセスが必要だ（Small Business Editionは、SBS Premium EditionにExchangeとSQL Serverがバンドルされているため、これらに必ずアクセスできる）。

　Dynamics CRM 3.0はボリュームライセンスプログラムを通じて販売されており、顧客は指名ユーザーごとのライセンス料とサーバごとのライセンス料を支払う。Professional Editionはユーザー当たり約620ドル／サーバ当たり約1240ドルから、Small Business Editionはユーザー当たり約440ドル／サーバ当たり約530ドルからとなっており、いずれも1年間有効のソフトウェアアシュアランスが含まれている。