Sunが本拠地サンタクララに開設したデータセンターは、年間約30%のエネルギー節約を実現するという。
Sun Microsystemsにとってデータセンターは、緑のオアシスのごときものであるようだ。
12か月間におよぶ設計・建設を経て、Sunは8月21日に7万6000平方フィートの新データセンターをオープンさせた。同社の幹部は新たなデータセンターについて、Sunが顧客にエコ・フレンドリーな技術を提供できること、さらにはグリーンIT技術を推進していることの証になるだろうと述べている。
Sunの本拠地であるカリフォルニア州サンタクララに開設された新データセンターは、使用電力量が従来より低く、一方でエネルギー効率は高いという。今回の取り組みは、Sunがそうした技術を持っているばかりでなく、その技術を自らのITインフラストラクチャに採用していく意向であることを示している。
また同データセンターは、Sunが生み出した最新のソリューションを顧客にデモンストレーションする場としても位置付けられている。ほかにも、Sunが数年前から強化してきたサービス部門に、同社が新データセンターで使用しているのと同じリソースを将来の顧客に提供する力があるとアピールする機会を生むという点も重要だ。
Sunの持続的コンピューティング部門担当ディレクターを務めるマーク・モンロー氏は、「新たなデータセンターの開設により、Sunは環境問題に関する責任を果たし、同センターに導入したさまざまな要素を他者と共有していくつもりであることをはっきり主張した。同様のデータセンター戦略をどう運用すれば、コスト削減やエネルギー効率の向上を実現できるのか、顧客に実証したいとも考えている」と話した。
コストカットにつながる環境対策として普及を図ってきた特定の技術や一連の製品を、データセンターで顧客に見せている大手ベンダーは、何もSunだけではない。
8月初めにはIBMが、世界各地のデータセンター数カ所において、Linuxを稼働させている同社の「System z」メインフレームシステム上で数千台のサーバを統合する計画を明らかにしている。これは、ニューヨーク州アーモンクに本社を置くIBMが今年に入って発表した、「Project Big Green」の一環であるという。
Hewlett-Packardも、データセンターでの取り組みやIT統合プロジェクトを、新たなテクノロジーや同社が進めてきた種々の環境プログラムを公開する場としてしばしば活用している企業だ。現在同社では、各国にある85カ所のデータセンターを米国内の6カ所のデータセンターに集約する大規模なプロジェクトが進行中である。同プロジェクトは今後数年間で10億ドルのコスト削減を可能にすると、HPの関係者は述べている。
Pund-IT Researchのアナリスト、チャールズ・キング氏は、IBM、HP、Sunの目指すゴールはどれも似通っているが、取り組みの内容はまったく異質のものだと指摘した。例えば、IBMはソフトウェア面から、Sunはハードウェア面から、問題解決を試みている。
「Sunの取り組みは好ましい結果を残しているが、モジュラー/ラック装置のスケーラビリティを重視する同社のアプローチでは、コンソリデーションの主体がハードウェアに偏ってしまう。さらに同社は、モジュラー/ラックを追加してデータセンターを拡大させているため、電力コストの高騰も招いている。IBMのメインフレーム戦略はソフトウェアに焦点が絞られており、LinuxとメインフレームのIFL(Integrated Facility for Linux)機能の両方を利用して、置換中のサーバ3900台(以上)を統合し、将来的なインフラの拡張を30台そこそこのメインフレーム上で行えるように工夫している」(キング氏)
モンロー氏によれば、Sunは同社のマルチコアプロセッサ「UltraSPARC T1」(コードネーム「Niagara」)を搭載したサーバを使用したことで、大幅な省エネを達成し、電力コストも低く抑えられたという。UltraSPARC T1サーバの導入により、Sunは利用サーバ台数を2177台から1240台まで減らすことができた。
新たな「UltraSPARC T2」はリリースされたばかりであり、Sunは今でも旧世代のNiagaraプロセッサを用いている。Niagara 2に対応したシステムも、まだ市場には出回っていない。
最終的には、Sunは従来20万平方フィートもあったデータセンターを7万6000平方フィートにまで縮小し、年間30%近いエネルギー節約と、年間110万ドルの電力費削減を実現した。また、データセンターで使用するサーバラックの数も、550から65へ激減させることに成功したと、モンロー氏は話している。
電力に関しては、旧データセンターの使用量が2メガワットであったのに対し、新データセンターでは約500キロワットで済むようになった。これにより、Sunが1年間に排出する二酸化炭素も4100トン減少する見込みだという。
冷却には、APCなど多数のサードパーティベンダーの冷却技術が使われている。可能なかぎり通気をよくするため、床からは電気ケーブルが一掃され、一部の配線で使用されていた銅線も排除された。
新データセンターは、ハイエンド機器からローエンド製品まで、Sunの広範なストレージ製品を利用している。同社は旧データセンターで738基のストレージデバイスを運用していたが、新施設ではこれが225基にまで減らされた。
サンタクララの新データセンターは6月から稼働しており、Sunはこのほかにも、英国のブラックウォーター、インドのバンガロールで同様のプロジェクトを立ち上げる予定でいる。
新データセンターのオープンとともに、同社は顧客のデータセンターにおける電力および冷却問題を解消する複数の新サービスをリリースする。Sunのシニアマーケティングマネージャーであるスティーブン・ノバック氏によれば、「Sun Eco Services」スイートと呼ばれる同新サービスも、21日から提供が始まるという。
同社はSun Eco Servicesにおいて、顧客のデータセンターの状態を評価する基本/上級サービスと、冷却機能の効率化および最適化を行うサービスを扱う。また、Worldwide Environmental Servicesと提携し、データセンター内のラック設置場所や冷却に関して提案するサービスも開始する。
「Worldwide Environmental Servicesは、こうしたタイプのサービスを専門とする企業だ。古いデータセンターの手直しを予定している顧客にも、新データセンターの建設を考えている顧客にも、最適な環境対策サービスを選択する機会を与えたいと思っている」(ノバック氏)
これらのサービスの価格は、基本評価パッケージが約1万ドルから、Sunおよび同社のパートナーのエンジニアによる訪問サポートが含まれる上級サービスが、3万〜4万ドルとなる。
IBMのように、Sunはデータセンターと関連サービスを見直す取り組みを最大限に活用しようとしていると、キング氏は言う。
「IBMのメインフレームとLinuxを併用した取り組みは、自社製品を使用しながら顧客にそうしたソリューションをアピールする、一挙両得戦法の典型例だ。Sunも同様のポジションに立つことを志していて、結果的に、省エネITベンダーの先頭近くを走ることに成功している。こういった取り組みを自社のサービス販売に活用していくのはごく当たり前な流れであり、もちろんSunも、今回のプロジェクトから派生したビジネスで一銭でも多くの利益を稼ぎだそうと考えているに違いない」(キング氏)
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