仮想化でNotes R4.6の延命――賢者か愚者か仮想化の達人

Windows NT Server 4.0上で稼働するNotes R4.6。OSのサポートは切れ、最新のハードウェアはWindows NT Server 4.0をサポートしていない。これからも使い続けるために仮想化技術にすがるあなたは果たして賢者か愚者か。

» 2007年09月21日 05時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

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質問

Windows NT Server 4.0上で勤怠管理システムを構築しています。これまでだましだまし使ってきましたが、サーバの保守切れなどの関係で、Windows NT Server 4.0を使い続けることが難しい状況です。しかし、この勤怠管理システムは機能拡張を重ねており、できれば今後も使い続けたいと考えています。仮想サーバ上であれば、Windows NT Server 4.0も稼働すると思いますが、何に注意すればよいでしょうか。


回答

 ご質問にあるように、サポートが切れる古いシステムを「延命」のために仮想化環境に移行したいという案件は、仮想化の案件としてはよく寄せられるものです。このことは、MicrosoftがWindows NT Server 4.0のサポートを完全に終了していることが特に大きく影響しています。

 1996年12月に発売されたWindows NT Server 4.0ですが、西暦2000年問題を機にシステムを刷新した企業も多く、その際に、このOSを用いてシステムを構築した例が多く見られます。すでに2007年となった現在、当時のサーバの大半は保守切れとなっているはずです。しかし、最新のハードウェアでは、Windows NT Server 4.0の稼働をサポートしているものは存在していないと言ってもよいでしょう。

 サポート切れの製品をリプレースする方が障害要因の減少などの観点からは望ましいことですが、さまざまな理由でそれができないケースも存在します。例えば、Windows NT Server 4.0上でOracle 7やNotes R4.6を稼働させているようなケースです。バージョン的には古いとはいえ、安定して稼働しているのであれば、そのまま使い続けたいというのが企業の本音ではないかと思いますが、いざサーバをリプレースしたとき、そのサーバでWindows NT Server 4.0がサポートされていなければ、それらのミドルウェアも稼働させることができなくなります。

 これを回避するために、Windows Server 2003や、それぞれのミドルウェアの最新バージョンにアップグレードする方法が一般的ですが、そうしたソフトウェアのライセンス費用、さらに、既存のアプリケーションが問題なく稼働するか検証するためのコストを考えると、企業にとっては大きなプロジェクトとなり、二の足を踏まれるかもしれません。

 これに対し、仮想サーバ(仮想マシン)上でWindows NT Server 4.0を稼働させることで、既存アプリケーションの延命を図るという方法もあります。この場合、Windows NT Server 4.0を再インストールすることなく、複雑なアプリケーション環境を再構築できますので、検証作業などを大きく削減できるばかりでなく、最新のサーバで稼働させることで、仮想サーバとはいえ大幅なパフォーマンスの向上が期待できます。

製品選びと移行支援ツールの選択が重要

 まず、どの仮想サーバソフトウェアを使うかですが、現時点でWindows NT Server 4.0をサポートしているのは、Microsoftの「Virtual Server 2005 R2」、VMwareの「VMware ESX Server 3」「VMware Server」など数えるほどしか存在しません。XenやVirtual Iron、Virtuozzoなどの仮想サーバソフトウェアはこの段階で今回のケースからは対象外となります。なお、後述するVMware ESX Server 3のアドオンモジュールで、1つの仮想サーバで最大4個の物理プロセッサを同時に使用するための「Virtual SMP」は、ゲストOSがWindows NT Server 4.0の場合は機能しません。

 次にポイントとなるのは、移行支援ツールです。ご質問のケースは、すでに稼働している物理サーバから仮想サーバに移行する「P2V」(Physical to Virtual)のケースとなります。VMwareであれば「VMware Converter」(もしくはPlateSpinの『PlateSpin PowerConvert』)、Microsoftであれば、「Virtual Server移行ツールキット(VSMT)」がP2Vを行うための移行ツールとなります。

 これらの移行支援ツールを使えば、移行に伴うかなりの工数を削減できますが、それらに過度に依存し、移行作業を軽視することは避けてください。特に古い物理サーバから仮想サーバに移行する際は、デバイスドライバ周りの部分で問題が発生することが多いようです。これは、移行元となる物理サーバのデバイスドライバを仮想サーバ用のものに置き換える過程で、特殊なデバイスドライバなどが使用されている場合、その認識で問題が生じやすいからです。

 こうしたことが原因で仮想サーバの起動時に「死のブルースクリーン」を目にしなくてすむよう、最近の移行支援ツールでは、必要なデバイスドライバをベンダーのWebサイトからダウンロードできるよう支援するユーティリティが提供されています。

その仮想化、本当にベストな選択?

 システムの延命を目的に現行のシステムを仮想化することは、長期的な視点で考えると問題を先送りにしているだけですので注意が必要です。

 特に、レガシーシステムでは、細やかにカスタマイズを重ねた結果、いわゆるブラックボックスになってしまっているケースがあります。こうしたシステムを仮想化して最新のハードウェア上で稼働させれば、パフォーマンスなどは確かに向上するかもしれません。しかし、アプリケーションの保守や不測のトラブルへの対応が十分に期待できない状況なのであれば、長期的にはさらなるコスト負担が必要となる可能性を内包することになります。

 システム全体の再構築が可能な時期なのであれば、既存のシステムをP2Vで仮想化することが本当に最良の方法なのかを再度検討した上で決定されることをお勧めします。

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