SAP、NetWeaverの年間サブスクリプションライセンスを提供

これまで恒久ライセンスで大企業パートナー向けに提供していたNetWeaverライセンスを、購入しやすい年間サブスクリプション方式で販売する。

» 2007年10月03日 16時40分 公開
[Renee Boucher Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 独SAPは年次TechEdカンファレンスで10月2日、開発者が年間サブスクリプション方式でNetWeaverのライセンスをダウンロードできるようになったと発表した。

 このライセンス構造変更の目的は、もっと幅広い開発者コミュニティーに同プラットフォームを開放することにある。言い換えれば、SAPはNetWeaverを同社および他社の顧客、パートナー、ISV(独立系ソフトベンダー)にとって戦略的な開発プラットフォームにしたい考えだ。同社はこの戦略を数年前から推し進めている。

 「当社が持たない機能の空白を埋めたり、代替アプリケーションを開発するような、NetWeaverを基盤にした革新が多数生まれると期待している」とSAPコミュニティーネットワーク担当副社長マーク・ヨルトン氏は言う。「わたしの予測では、ライセンスが購入しやすくなることで、顧客以外の企業がNetWeaverを試す機会ができる」

 SAPは数年前に「Enterprise Services Architecture」イニシアチブの一貫としてNetWeaverを投入し、複合型アプリケーションのコンセプトを導入した。このコンセプトは、SAPのERP(エンタープライズリソースプランニング)スイートの各種アプリケーションのコンポーネントやサービスを使って、プロセスベースの機能を構築するというものだ。

 だが、SAPがNetWeaverプラットフォーム上で動くサービスベースの新しいオンデマンドアプリケーションスイート「Business ByDesign」を発表した今となっては、新しいNetWeaverライセンスプログラムはSAPがプラットフォーム企業としてオンデマンド世界に拡大するための取り組みなのかが疑問となる。もしそうなら、Business ByDesignのイノベーションをどのようにSAPのオンプレミス(自社運用型)アプリケーションに取り込むのだろうか。

 この疑問への簡潔な答えは、「SAPのプラットフォーム戦略は短期的にはあまり変わらない。オンプレミス開発戦略にとどまる」のようだ。だが来年、もっと多くのユーザーやパートナーにBusiness ByDesignが提供されるようになれば、このパラダイムは決定的に変わるかもしれない。

 「Business ByDesignはNetWeaverの従来のコードの多くを活用しているため、NetWeaverとBusiness ByDesignの間には素晴らしいシナジーがある」とヨルトン氏は語る。「だが、この2つの製品は正確に同じというわけではない。Business ByDesignに関連するイノベーションがあって、SAPの次のステップはBusiness ByDesignで導入された新技術をNetWeaverに統合しつつ、これら2製品が共存して開発されるようにすることだ」

 同氏は、Business ByDesignは現在、SAPでは別のプラットフォームとして扱われていると語った。「これらのイノベーションの再統合はこれからだ」

 Business ByDesignの投入で、SAPはオンデマンド市場のリーダーSalesforce.comと正面から戦うことになった。Salesforce.comはCRM(顧客関係管理)アプリケーションを提供する一方、フル機能の開発者環境Force.comも有している。同製品はパートナーがオンデマンドのマルチテナントアプリケーションを開発できるようにする。

 今のところ、サービスとしてのインフラ――同社が言うところの「サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)」――の提供においてはSalesforce.comが独走している。SAPはNetWeaver開発者ライセンスを購入しやすくすることで、プラットフォームの観点からその差を縮めようとしているのかもしれないが、それでも疑問は残る。オンデマンドプラットフォーム企業への転身は、まだSAPにとって定まった目標ではない。

 今週の発表の前は、SAPのNetWeaver開発者ライセンスは開発者向けに販売されていたが、恒久ライセンスで、購入が難しかったとヨルトン氏は言う。

 「ライセンスは『営業担当者を通して、恒久的に』販売されていた」と同氏。「主にパートナーの大企業向けで、入手が難しかった」

 新しい「SDN Subscription」プログラムでは、開発者、ソフトウェアアーキテクト、コンサルタント、ビジネスプロセス専門家がNetWeaverを利用しやすくなっていると、SAPの担当者は語る。このライセンスにはソフト、サービス、NetWeaver関連の学習資料が含まれる。

 SAP NetWeaver Business Intelligence、Master Data Management、NetWeaver Mobile、Portalなどの個々のコンポーネント、Web Dynproや、ユーザーインタフェースを開発するためのNetWeaver Composition Environmentなどの開発ツールも含まれている。

 NetWeaverのSDN Subscriptionプログラム――SAPが昨年のTechEdで概要を明らかにした――では、NetWeaver開発環境は、基本的に従来よりも利用しやすくなっているとヨルトン氏は言う。米国とドイツで、SAPのDeveloper Networkを介してオンラインで購入でき、料金は2300ドル(約1700ユーロ)だ。

 SAPは、来年にはNetWeaverライセンスをほかの国でも販売する意向だ。

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