成果主義の悪夢? 部下の運命を左右する上司の「ひと言」女性システム管理者の憂鬱(4/4 ページ)

» 2007年10月11日 07時00分 公開
[高橋美樹,ITmedia]
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出世運に見放されるわたし

 評価される側の不信感が募ると、上司に対しての失望感につながる。現に、その部長が課長と相談して決めたその期の評価は、残業の多い順に高評価が付いたと、まことしやかなうわさが流れてきた。きっと部長は、個人の成果を判断する術を持たず、目に見える数字で機械的に評価を下したのだろう。誰かに何か言われたら、この社員はこれだけ頑張って仕事していたじゃないかと、数値を基に反論しようと考えたのかもしれない。

 結局は、面と向かって文句を言うような社員も現れず、ただ現場の士気が著しく低下しただけだった。そんな上司にこれから先数年間、自分の将来に影響する評価を託さなければならない。自分と相いれない上司であっても、仕事に対するき然とした価値観が感じられれば、たとえ高評価をもらえなくとも、方向性の違いということであきらめはつく。しかし、評価をほかの単純作業の延長線上に考える上司の言動は、一瞬にして部下のやる気をそいでしまう。

 そんなこともあり、モチベーションが急降下していたちょうどそのころ、組織変更が行われ、わたしの部署にまた新たに課長職が設けられた。同時に所属部署も変更となり、その「おじいちゃん部長」からも逃れることができた。

 今度大阪からやって来たA課長は、運用部門のマネジメントを自ら熱望して異動を願い出たという人物だ。移転してきてすぐウイルス騒動があり、わたしがバタバタしているのを目の当たりにしたA課長は、要領が悪いながらも、何とか前に進もうとするわたしの仕事ぶりをけなげに思ってくれたようだった。

 それからすぐの期初の面談の際には、次の期に昇進させるつもりでいるから、今期は頑張るようにと激励してくれた。そして「おお、ようやく評価してくれるマネジャーに巡り会えた」と仕事に対する意欲もわき上がり、頑張り始めたところで、人事から直接、かねてから希望していたプロジェクトへの異動の打診を受けてしまった。そこへ異動するとまったく新たな業務になるため、これまでの業績はカウントされずゼロからの出発になってしまう。

 出世運に見放された自分の不幸を嘆きながらも、わたしは役職よりも仕事の面白さを優先し、ヒラのまま異動を受け入れた。

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 それからしばらくして、A課長が周囲とそりが合わず、孤立しているとのうわさが耳に入ってきた。そのころからだろうか。社内でわたしに会うたび、A課長が「戻ってきてくれへんか」と追いすがるようになったのだ。おかげで、すっかり大の男を子分に従える姉御のイメージが染み付いてしまった。ことほどさように上司の言動は、部下の運命をいとも簡単に左右してしまうのであった。

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