第11回 HFS Plus独自の機能【後編】Undocumented Mac OS X(1/2 ページ)

Mac OS Xになってから拡張されたHFS Plus独自の機能について、Jaguarでジャーナリングと同時に搭載された遅延再配置、Pantherでひそかに追加されたHot-File-Adaptive-Clustering、そしてTigerで追加された、拡張属性とアクセスコントロールリストについて解説する。

» 2007年10月16日 00時00分 公開
[白山貴之,ITmedia]

遅延再配置(hfs_relocate)

リスト1

 遅延再配置は、Jaguarでジャーナリングと同時に搭載された機能だ。ジャーナリングが有効かつ書き込み可能なボリュームで20Mバイト以下のファイルがオープンされたとき、もしそのファイルが8つ以上のエクステントを使用している(カタログノードの8番目のエクステントが使用されている)ならば、より連続したディスクの空き領域へ再配置が行われ、エクステントの数を減らすというものだ(リスト1)

リスト1 遅延再配置の実際。HFS Plusファイルシステムのopen処理(hfs_vnop_open)の中に、遅延再配置機能が存在する(編集部注:リスト1は画像として用意しました。上記アイコンをクリックいただくことでご覧いただけます)

 連続した領域にファイルが移されることで、より少ないエクステントで表現でき、また断片化がおさえられデータが連続したアロケーションブロックに配置されることでI/O性能が向上する。

 簡単に言えば、Mac OS Xでは小さいファイルに関しては自動的にデフラグが掛かるため、FATのように断片化を気にする必要がなく*、以前のWindowsのようにこまめにデフラグを行う必要がないということだ。

Hot-File-Adaptive-Clustering

 Pantherでひそかに追加されたファイル配置の最適化機能がHot File Adaptive Clusteringだ。

 HFS Plus上にある10Mバイト以下のファイルに関して、Mac OS Xのカーネルはどのファイルがどれだけアクセスされたかを記録、統計情報を作成している。この統計情報を基に、その時点でよく読み込まれたファイル(ホットファイル)を調べ出し、そのファイルをHDDの外周のアクセスの高速な領域*に移動させるというのがHot File Adaptive Clusteringだ。

 ホットファイルの移動時には、先の遅延再配置と同じくなるべく少ないエクステントで表現できるよう再配置が行われるため、断片化が解消されるという効果もある。 ユーザーから見えるファイルの階層構造的にはまったく変わらないが、内部的には高速に読み込まれる領域に移動され、しかも断片化が解消されることで読み取り時のパフォーマンスが向上する。

 なお、このHot File Adaptive Clusteringもジャーナリングが機能しているときに限り動作する。ジャーナリングの項目で述べたように、Panther以降ジャーナリングはデフォルトで有効となっており、新規にMacを購入したユーザーはもちろん、以前のOSからアップグレードしたユーザーも知らないうちに*こうした高速化の恩恵を受けているのだ。

このページで出てきた専門用語

断片化を気にする必要がなく

Mac OS XのHFS Plusがクランプ値という値を利用して、ファイルとファイルの合間にすき間を作って断片化をおさえていることを思い出そう(本稿の第4回を参照)。ファイルをすき間なくきっちり並べるデフラグのようなディスク領域の最適化を下手に行ってしまうと、ファイルが伸びるたびに断片化や再配置が起こり、かえって性能が落ちてしまうことが考えられる。市販のデフラグツールがこうしたMac OS XのHFS Plusファイルシステムの挙動にどこまで追従しているかは、そのアルゴリズムが非公開のため不明であるが、下手なデフラグはかえって性能を落としかねない。

HDDの外周のアクセスの高速な領域

この領域をメタデータゾーンといい、ホットファイル以外にカタログファイルやアロケーションファイルなどの、HFS Plusのファイル管理に用いられているファイルのデータが格納されている。

知らないうちに

意外なことだが、Appleはこうした地味な機能強化について大々的にアナウンスすることがほとんどない。ソフトウェアによる高速化の詳細はもちろん、ひどいときにはMac miniのようにCPUのスペックアップ(1.42GHzから1.5GHzに変更)というハードウェア的な改善すらも暗黙のうちに行う。


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