今回は「リリース管理」を紹介する。「リリース管理」に関連登場する重要な3文字アクロニム(頭字語)には「DSL」と「DHS」がある。ITILの書籍を読むとDSLについてのみ書かれている場合が多いが、DHSも重要な考え方である。
このコンテンツは、オンライン・ムック「運用管理の過去・現在・未来」のコンテンツです。関連する記事はこちらでご覧になれます。
「DSL(Definitive Software Library:確定版ソフトウェアの保管庫)」とは、変更が承認され、実環境にリリースされたすべてのソフトウェアのオリジナルコピーを安全に保管しておく書庫のことである。DSLは物理的な倉庫かもしれないし、大規模なストレージかもしれない。ここには古いバージョンのソフトウェアも保管しておき、リリースがうまくいかなかった場合の切り戻し(古いバージョンに戻すこと)に対応できるようにしておく。DSLは実環境やテスト環境とは物理的に異なるライブラリとして、厳重に管理される。
また、すべての変更は変更管理、リリース管理を通っている「はず」なので、DSLに保管されているソフトウェア以外のソフトウェアが実環境にインストールされているはずはないことになる。CMDB(構成管理データベース)の中に、DSLに含まれていないソフトウェアが存在してはおかしいことになる。そのためDSLは、CMDBと綿密に連携する必要がある。
一方「DHS(Definitive Hardware Store:確定版ハードウェアの保管庫)」とは、変更が承認され、実環境にリリースされたすべてのハードウェアと同じものを安全にストックしておく物理的な保管庫のことである。実環境のハードウェアに故障が発生した際の予備として機能するだけでなく、何らかの問題を確認するためのテスト環境として利用するのも有意義である。DHSはDSLと違い、物理的な倉庫が必要だし、ハードウェアをまるごと1つ余分に購入しなければならないことになるので、その構築には費用がかかる。しかし、ビジネスに対するインパクトを最小限に抑える目的で導入することをお勧めする。
DSLやDHSは、誤って削除されたり(DSL)どこかに移送されたり(DHS)することのないよう、厳重に管理する必要がある。立ち入ることのできるメンバーを制限し、アクセス権を設定したり、鍵をかけたりする必要がある。さらに防災の観点からも、災害対策が必要である。
リリース管理の目的は、変更管理で承認されたRFCに対する変更を、ビジネス的な観点においても技術的な観点においても確実に実装することである。それだけでなく、正式な手順とチェックで稼働環境とそのITサービスを保護し、変更によって発生する負のインパクトを最小限に抑えることも重要な目的である。
リリース管理では、次のような事柄に責任を持つ。
変更管理とリリース管理の責任範疇は大きく異なる。変更管理は、ビジネスに対する正のインパクトを確実に与え、負のインパクトを最小限にするためにはどのような変更を行えばよいか、ということに責任を持つのに対し、リリース管理は変更管理で承認された変更が確実に行われることそのものに責任を持つ。もちろん、変更管理とリリース管理は綿密に連携し合わなければならない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.