検索行為を介さずに“未知”情報を集めるメカニズム次世代検索の行き先(1/2 ページ)

求める検索情報を100%得られるようになる――そんな検索が将来実現するかもしれない。キーワード検索では得られない“未知”の情報にたどりつくために必要となるものは何か。FASTのオルスタッドCTOは、その一端を示した。

» 2007年11月01日 07時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

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 検索という概念がインターネットで重要になった頃、Webサーチやデータベースサーチのシステムはそれぞれ独立したものだった。そのためユーザーは欲しい情報を別のシステムから探し出すという“不自由な検索”を強いられていた。「ユーザーが求める情報を100%得られるという期待がなかった」――ノルウェーFAST Search&Transferのビョルン・オルスタッドCTOは、いわゆるキーワード検索の段階を検索の第一世代と定義する。

image FAST Search&Transfer、ビョルン・オルスタッドCTO

 例えばクエリーをかけて検索すると、価値のある「情報」と価値のない「ノイズ」が同時に得られ、ユーザーは求める情報を正確に得られる保証がなかった。その後Webの世界ではGoogleやYahoo!といった企業が台頭し、テキストレベルにおいて意味のある検索ができるようになってきた。しかし、これをもってしても情報とノイズを完全に振り分けることはできない。

 現在、HTMLベースのWebページにおいてテキストサーチが使われているが、今後は構造化・非構造化データ、映像や音声などのリッチメディアをも検索できるエンジンが必要となっている。ECM(エンタープライズコンテンツ管理)といった企業内検索分野では、あらゆるデータを単一の検索エンジンから探す試みがすでになされている。

 検索の高度化、すなわち検索における新たな局面は上記のものだけにとどまらない。「これまでの検索は“既知”の情報を探すための手段だったが、これからは存在の分からない“未知”の情報を検索できるようになる」――検索のトレンドはこのようにシフトしていくと同氏は言う。

 例えば、特定の電子メールを探そうとする場合は、人の名前や内容など既知の情報を基にメールボックス内を検索することがほとんどだ。だが、がんの新薬にどういったものがあるかというように、検索対象の名称や存在が分からないものを探す場合、キーワード検索ではらちが明かず、探しているものを見つけられないケースが多い。

 高度化を深めた検索は、「エンドユーザーにとってどんぴしゃの情報が見つかる体験」(同氏)をもたらすものであるという。検索を通じて良い体験をしたユーザーは、その検索結果のWebサイトに頻繁に訪れるようになる。Webページのトラフィックが増加することで、企業はビジネス基盤を強化させ、ユーザーに意味のある情報を提供するようになる。結果として、事業体の競争力を向上させる効果をもたらす。ユーザー体験の改善こそ、検索に必要な肝ということだ。

 さらなる検索方法として、ユーザーの検索体験を認識しそのユーザーに適切な情報を提供していくモデルが考えられるという。個人の検索行動履歴を蓄積することで、検索を行う場所が“未知”の情報を発信するパーソナルポータルになる。「キーワード入力といった今の検索は古くなってしまうかもしれない」(同氏)

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