検索行為を介さずに“未知”情報を集めるメカニズム次世代検索の行き先(2/2 ページ)

» 2007年11月01日 07時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]
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“未知”を検索するメカニズムとは

 FAST Search&Transferのダイナミックドリルダウン機能やゼロタームサーチの概念は、「未知」の情報を探し出すのに適している。

 例えばGoogleを使ってユーザーが検索対象にたどりつくまでの過程において、どういった体験パターンがあるのか。ユーザーにとって良い経験とは何十億あるページから求める情報にたどり着けた時で、逆に悪い体験とはどれだけ検索しても自分が求める情報にたどりつけなかった時のことを指す。

 例えば「プロジェクトリーダー」と検索すると、Web検索では約何万件もの情報がヒットする。ユーザーにとって良い経験とは、最終的に履歴書を出すという行動につながるWebページが見つかることだが、通常のキーワード検索では、最初のページに表示される10件の情報に履歴書を書きたい企業が表示される確率はとても低い。

 ここで有効なのがダイナミックドリルダウン機能だ。検索キーワードに即して、所在地や給料レベル、職種などのコンテンツを表形式で表示する。これらを基にさらに具体的に検索をかけることで、“自分が知りもしなかった”具体的な会社名にたどり着くことができるという。上記の機能が適用されているものの例に職業検索があり、日本ではすでにリクルートなどの企業が取り入れている。

 こういった機能はすでにライフサイエンス系の検索などで運用されている。Web検索では、求める情報の単語名がはっきりと分からなければ正確な検索結果にはたどり着けない。この技術を使うと、例えば自分が関心のある疾病領域を検索すれば、それにかかわるDNA配列や酵素、医薬品などがカテゴリー表示される。検索キーワードに関連したコンテンツがある限り、それらの表層をまとめたものが自動的に表示される。

ゼロタームサーチとは

 「新聞のように、1ページ目に必要な情報を自動的に表示できるようにならないか」――こうした考えから生まれた概念がゼロタームサーチだ。話題の記事や、以前読んだ記事とかかわりのある記事を自動で取り上げて1つのページに表示する。そこに検索という行為を行う必要はない。またスポーツには関心がないが、ひいきにしているチームのニュースだけを抽出するという具合に、ユーザーの行動を基にした検索結果を自動で画面上に表示することを指す。言葉の通り「ゼロタームサーチ=単語を必要としない検索」といえよう。

 ゼロタームサーチはユーザー体験をデザインするものだという。音楽を例にとると、ユーザーの好みのタイプの音楽を認識してアーティストや楽曲の情報を提供する。ユーザーが新たな“発見”をすることを狙いとしている。検索結果が膨大な場合、キーワード検索では具体例をいちいち入力して結果を絞り込むことが必要だが、ゼロタームサーチではそういった行為すら必要なく、関係するデータを一瞬で表示できる。

image 行動履歴に基づいたレコメンデーションにより、ユーザーは検索という行為を行うことなく、求める情報にたどりつける(画面はイメージ図)

次世代検索の一端

 同氏によると会話を基にした検索もいずれ生まれてくるという。この検索はユーザーが求める情報に対し、答えになるのか分からないような検索結果を類推して返すのではなく、まるで人間と対話をして潜在的な答えを見つけるような検索を意味する。

 例えばノルウェーに旅行に行きたい場合、ノルウェーと検索するとお勧めの場所の候補をいくつか絞ってくれるような検索はいくらでもあるが、それがユーザーの満足のいく結果を示しているかと言えば、そういうことはない。「どんな旅行?」「ロマンチックな体験がしたい?」「エクストリームスポーツがしたい?」など、人と人が対話をしながら答えを見つけるようなことを検索の世界でも実現すると同氏は述べた。


 中国の検索大手百度(Baidu)が中国国内で検索市場のシェアを占めているという現状には勇気付けられるとオルスタッド氏は話す。「ユーザーにとって良い検索体験をグローバルなプロバイダーよりもローカル企業が作り出せることを示している」からだ。

 GoogleやYahoo!といった検索最大手の牙城を切り崩すチャンスがローカル企業にも残されている。「自分の知識やコンピテンス、市場に関する知識をサーチの最新技術と組み合わせることで、十分な収益をオンラインで上げることができる」(同氏)。検索をめぐる企業間の闘争はまだ始まったばかりだ。

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