SaaSとRIAに注力するAdobeの意図

Adobeが示すサービス化へのシフトは同社の将来を大きく変えるであろうが、その重責を担うケビン・リンチ氏は、それは時代の必然であり、すばらしい変化なのだと話す。

» 2007年11月01日 10時34分 公開
[ITmedia]

 「アプリケーションの作り方がサービス化にシフトしつつある」――Adobeのプラットフォーム事業部シニアバイスプレジデント兼チーフソフトウェアアーキテクトのケビン・リンチ氏は、同社が進めるパッケージソフトウェア型のビジネスモデルが、時代の流れとともに、今後、SaaS、RIA(Rich Internet Application)へ変わっていくことをあらためて説明した。

 11月1日から開催される「Adobe MAX Japan 2007」の開催を前に、プレス向けに同社の新技術や戦略について語ったリンチ氏。RIAの時代が到来した今、その時代で中心的な役割を持つ技術として、同社が現在β版として提供しているRIA実行環境「AIR」(Adobe Integrated Runtime)や、その開発環境であるFlex、そしてFlash Playerなどを挙げる。

 Webアプリケーションをデスクトップに持ってこようとするAIRのビジョンがユーザーに受け入れられたのか、AIR自体はすでに46万ダウンロードを達成し、SDKも5万ダウンロードを突破、AIR上で動作するアプリケーションも数百登場するなど、まずまずの滑り出しを見せている。Adobe自身もAdobe Media Playerやオンラインワープロ「Buzzward」などをAIRで開発しているものの、これはAIRの潜在能力をAdobe自らが示す必要があると判断してのことで、基本的にはユーザー企業にAIRアプリケーションを開発してほしいと話した。

 それを手助けするめのRIAデザインツールとして「Thermo」も披露された。これは、プログラマーでなく、デザイナーがアプリケーションを開発することを可能にするためのツール。PhotoshopやIllustratorで作成したものを取り込み、それぞれが何を表すかをデザインすることでアプリケーションを完成させることを狙ったもので、デザイナーはWebサイトを作る感覚でRIAアプリケーションを作成できるようになる。まだ全容が見えたわけではないが、開発をプログラマーレスで完結させかねないこの野心的な取り組みは今後が注目される。

 もちろん、AIR以外の部分でも開発には余念がない。例えば、開発コード「Astro」で呼ばれる次世代Flash Playerでは、高機能なフィルタエフェクト、マルチカラーなどをサポートする新テキストエンジン、さらに2D画像を3DにレンダリングするPerspective Transportationなど表現力が格段に向上するという。

 RIAに注力する一方で、SaaSにも目を向けている同社。すでに「Premiere Express」を筆頭に、既存資産であるデスクトップアプリケーションのSaaS化を進めている。「ホスティング型のサービスは次世代アプリケーションの提供形態。Adobeの全製品はホスティングサービスとして提供されるようになる」とリンチ氏は述べた。

 既存のアプリケーション以外でも、画像にさまざまな効果を付加するサービスである「Scene7 Imaging」やファイル共有サービス「SHARE」のほか、「Pacifia」「CoCoMo」といったコラボレーション環境を提供するサービスなど、SaaS型のサービスの開発も進めている

 これらの一部はAdobe MAX Japan 2007でAdobe自身や参加企業からデモとして披露される予定となっている。「世界では今非常に素晴らしい進化が起ころうとしている。Adobe MAX Japan 2007では、その進化を目にすることができるだろう」(リッチ氏)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ