ITサービス継続性管理――災害対策を講じているか?初心者歓迎! ITIL連載講座(3/3 ページ)

» 2007年11月02日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]
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復旧オプションの種類

 ITサービスを提供するITインフラや建物などの設備、電気、インターネット接続などのライフラインに被害が出た場合、とりうる復旧オプションの種類には次の6通りの選択肢がある。もちろん、どの選択肢をとるか、ということは、被害を受けた対象物がビジネスに与えるインパクトの程度や、被害そのものの程度などによって決定することになる。

1.何もしない

 文字通り、何もしないこと。十分に機能する代替策がすでに存在して稼働していたり、そのビジネスそのものを災害を機に完全に停止させてしまう場合に有効な選択肢である。

2.手作業

 ITサービスが提供していた作業を、ITがまだ存在しなかった手作業の時代に戻って行うこと。すべての業務が手作業に戻れるとは限らないし、効率も極端に落ちるだろう。たとえわずかでも動き続ける必要のある部分から優先順位をつけて対応し、災害による脅威が去った後で時間をかけてITSCMに基づかない復旧を少しずつ行っていく。高次元の復旧オプションの選択に多大な費用がかかって現実的でない場合や、ほかの復旧オプションがまだ完成していない場合の措置である。

3.相互協定

 自社と同様のITサービスを持っている他社と、災害時の相互利用の協定を結ぶこと。セキュリティ面やキャパシティ面ではあまり現実的ではない。しかしバックアップ媒体の保管場所としてや、輸送手段や通信手段などの一部の利用に限っては有効である場合がある。

4.段階的復旧

 コールド・スタンバイともいう。IT復旧までに72時間程度の猶予が持てる場合に有効な手段である。一般に代替のインフラを用意しておかず、サービスを提供する外部組織のインフラを借りたり、仮設のプレハブに災害時に代替設備を借りたり購入したりして準備し、そこにバックアップ媒体からシステムやデータを戻す、という手法である。

5.中間的復旧

 ウォーム・スタンバイともいう。IT復旧までに24時間〜72時間程度の猶予が持てる場合に有効な手段である。災害が発生した際に、あらかじめ用意しておいたバックアップシステムに切り替えて稼働させる方法である。バックアップシステムは自社で用意して普段は稼働させないでおくか、または代替機を提供する外部サプライヤと契約しておき、災害発生時に迅速にセットアップするような方法を用いる。

6.即時的復旧

 ホット・スタンバイともいう。IT復旧を24時間以内に行うことを目標とする手段である。一般に、稼働環境とぼとんど同じシステムを稼働環境と十分離れた別の場所に常に用意しておき、システムやデータの同期をとっておく。稼働環境が被害にあった際に即座にバックアップ環境に切り替える方法である。実現には非常にコストがかかるが、ITサービスの即時復旧がビジネスを継続する上で必要な場合はこのオプションを選択する。

ITサービス継続性管理のKPI

 ITSCMのKPI(重要業績評価指標)がうまくいっているかどうかを評価するためのKPI(重要業績評価指標)には、次のようなものが考えられる。

  • ITSCMに含まれなかった、本来含まれるべきITサービスの数
  • レビューによって明らかになった問題点の数
  • テストによって明らかになった、計画通りに復旧されない対策の数
  • 顧客やユーザーに対する認知度調査
  • 顧客満足度、ユーザー満足度

 前回「100%の可用性はありえない」と書いた。同様に、100%安全なインフラは存在しない。日本ではテロの危険性は欧米に比べて少ないかもしれないが、そのぶん地震や台風などによる被害は欧米よりも多いと言えるだろう。筆者は1995年に起きた阪神・淡路大震災の被災者である。個人的な尺度と事情で恐縮だが、筆者の周りの全事業者のうち、あの震災が原因でビジネスそのものを辞めてしまった事業者が少なくとも25%は存在した。「関西に大地震は起きない」という伝説を、皆が信じていた。しかし現実はそうではなかった。あの地震から数年間は、個人用の耐震グッズが飛ぶように売れた。建物に対する耐震・免震構造に関する関心も高まった。さて、あなたの会社は災害に対してきちんと対策を講じているだろうか?

※本連載の用字用語については、ITILにおいて一般的な表記を採用しています。

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