キャパシティの活動は、図1の通りである。重要なことは、これらの活動が既存のITサービスに対して継続的に、反復的に行われるということである。
1.監視
ハードウェアやソフトウェアがSLAの目標値を達成し続けられるよう、個々のITインフラを継続的に監視する。あらかじめ、しきい値を設定しておき、しきい値を割り込んだら自動的に警告を発するようなツールを導入することも視野に入れるとよいだろう。その場合は実際のSLAよりもしきい値を厳しめに設定しておき、SLA違反になる前に是正措置が取れるようにしておくことが望ましい。
2.分析
監視によって収集されたデータを分析する。新たなサービスレベルやベースラインを確立するためにも重要である。将来のトレンド分析やリソースの予測にも使用できる。
3.チューニング
分析した監視データに基づいて将来のITサービスに対する負荷を予測し、パフォーマンスを改善する。多くの場合チューニングは変更を伴う。変更によるリスクを最小限にするためにも、変更管理プロセスと密接に連携する必要がある。また逆に、前述の「月末・月初に処理が集中する」というようなトレンドがある場合は、ビジネス側の需要を管理し、ピークを分散させるような使い方が可能かどうかの分析も必要である。
4.実装
監視、分析、チューニングの活動によって発生した変更要求を実装する。実際には変更管理、リリース管理の範ちゅうとなる。変更を実装後に監視を継続することによって、変更の影響や効果を評価する。
5.報告
SLA違反が発生したような場合や、キャパシティがビジネス要求と大きくかけ離れたような場合はその都度報告を行い、是正策を考える必要がある。
キャパシティとパフォーマンスを測定・監視し、そのリポートを作成するためには、キャパシティ管理データベース(CDB:Capacity DB)の設置が有効である。これは単一のデータベースではなく、事業の観点、サービスの観点、テクニカルな観点、財務の観点などのさまざまなデータが格納され、キャパシティを分析する上で利用されることになる。
キャパシティ管理がうまくいっているかどうかを評価するためのKPI(重要業績評価指標)には、次のようなものが考えられる。
キャパシティのアップサイジングには、大抵の場合追加の購入が必要となるため、お金の面でもリソースの面でも、コストが発生する。しかしコスト削減を目的としたITリソースの縮小は、ビジネスの成長を阻害する。コストは最適化されるべきものであって、削減されるべきものではない。ビジネスに見合ったキャパシティが必要なのである。
※本連載の用字用語については、ITILにおいて一般的な表記を採用しています。
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