スマートフォンのウイルス対策は過剰気味?

セキュリティ研究機関のジーデータは、スマートフォンのウイルス対策に神経を尖らせる必要はないと主張。セキュリベンダーは包括的な対策が重要と反論する。

» 2007年12月21日 15時25分 公開
[ITmedia]

 セキュリティ研究機関のジーデータソフトウェアは今週17日、「スマートフォンにおけるウイルス対策の重要性は低く、セキュリティベンダーが扇動している」との意見を表明した。セキュリティベンダーは、「ウイルスだけでなく包括的な対策をすべき」と反論する。

 ジーデータは、世界で1億6500万台以上が出荷されているSymbianプラットフォームの端末を狙ったウイルスの発生件数を独自に調査した。

Symbian端末を狙ったウイルス発生件数(ジーデータ調べ)
発生件数
2005年 145件
2006年 73件
2007年(11月まで) 23件
2007年予測 26件

 調査結果によれば、2006年以降はウイルスの発生件数が大幅に減少しており、同社では「スマートフォンに魅力を感じるウイルス開発者が少ないと思われ、PCのようなウイルス被害の大量発生が起こりにくい」と分析している。

 Symbianプラットフォームを狙ったウイルス被害では、ショートメッセージの添付ファイルやBluetoothを経由して拡散するトロイの木馬などが、たびたび報告されている

iPhoneにも便乗?

 同社は、「iPhone人気にあやかって、その危険性を訴えるセキュリティベンダーもいる。仮に、iPhoneが2008年に1000万台売れたとしてもSymbianの10分の1以下に過ぎない。セキュリティベンダーの主張には明確な根拠がなく、単にニッチ市場を占有したいだけではないか」とも主張する。

 iPhoneを狙ったウイルスの発生はまだ報告されていないが、米国では侵入テストツールを使ってiPhoneの制御に成功したとの報告がある。米Symantecは、今年6月にブログ上で「SafariブラウザとHTMLメール機能は理想的な攻撃経路になり得る」と指摘した

 ジーデータは、「iPhoneはネット接続による危険が指摘されているが、切迫したウイルス対策の必要性はないと考える」としている。

備えは十分に

 ジーデータの意見に対して国内のセキュリティベンダーは、ウイルス対策だけではなく、包括的な対策を考える必要があると主張する。

 マカフィーは、「モバイルでもスパムやフィッシング詐欺被害が想定され、幅広い対策を考えるべき。スマートフォン市場はPC市場よりも小さいが、地域によってはコンテンツビジネスが成立しているところもあり、金銭目的の犯罪が起こりうる」とコメントしている。

 シマンテックは、「モバイル端末の紛失率は、ノートPCの15倍ともいわれる。端末の録音機能を利用して盗聴行為を行う『スヌープウェア(編注:Symantecが命名)』も登場しており、ウイルス対策に加えて、暗号化やパーソナルファイアウォールなど総合的にモバイル端末を保護する対策が重要だ」としている。

 ジーデータは意見を主張した理由について、「クリスマス商戦でスマートフォン購入を考える消費者は多く、セキュリティの実情を知ってほしい」と説明している。

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