「電源容量不足」攻略法!拡張は計画的に(1/2 ページ)

データセンターやサーバルームにおいて、電源容量の確保は切実な問題となっている。これを解決するための方法をストーリーに沿って紹介する。

» 2007年12月27日 07時00分 公開
[敦賀松太郎,ITmedia]

このコンテンツは、オンライン・ムック「サーバ祭2007」のコンテンツです。関連する記事はこちらでご覧になれます。


 サーバやストレージなどのハードウェア製品、およびそれらの製品に組み込まれるパーツを生産するベンダーは今「製品の省電力化」を目指して懸命に取り組んでいる。その理由として、地球温暖化対策や二酸化炭素排出量削減といった環境問題への対応という世の中全体の動きに加え、増大化の一途をたどる企業の電力消費量を削減することが挙げられている。

 オフィス内で働くビジネスマンにしてみれば、電力消費量の削減と言われても、なかなかピンと来るものではない。だが、データセンターやサーバルームを直接管理する部門にとっては、緊急に解決すべき問題として顕在化しつつあるのだ。本記事では事例を想定し、この問題の解決法を考える。

サーバルームは改修した。しかし・・・

 精密機器メーカーA社の生産事業所では、製品や生産設備の設計、開発用途に使用する大量のサーバコンピュータが稼働していた。これらはもともと、事業の拡大に伴って部署単位でそのつど必要な機器を導入してきたものであり、いわば無秩序に導入されてきたものだった。

 しかし、本来の業務ではないサーバコンピュータの管理負荷は、次第に各部署の重荷になってくる。一方で内部統制や情報保護といったコンプライアンスおよびセキュリティ対策への取り組みも求められる時代になった。こうした事態に対応するために、A社は開発部門の中にIT機器の運用管理を一元的に担当する係を設けた。3年前のことである。

 その際、事業所の社屋2階の一室をサーバルームとして改修し、部署単位に散在していたサーバコンピュータを物理的に集約した。

 そのサーバルームには、すでに企業合併によって消滅したブランドの製品、技術者が自作した手作りの製品も含め、10社近い異なるメーカーのサーバコンピュータが並んでいる。形状も、スタンドアロンタイプのタワー型から、19インチラックに整然と収納されたラックマウント型まで実にさまざまだ。もちろん、その中には、ストレージやネットワーク機器も含まれる。

 サーバルームへの改修に当たっては、ネットワークケーブルの敷設やそれに伴う床のかさ上げ、空調設備の導入など簡単な工事を施行しただけだった。これが、サーバルームがのちのちに直面する問題の始まりだった。

思わぬ危機! 電源容量不足

 今日、多くの製品分野では、さまざまな顧客志向に応えるために、単品種の大量生産が影を潜め、多品種の小ロット生産へと切り替わっている。A社の製品も例外ではなく、ここ2〜3年の短期間で生産現場はライン方式からセル方式が中心となった。開発部門でも、部品共通化によって生産性の向上を図りながら異なるデザインや機能のラインアップを取り揃えるために、業務が多様化していった。ただし、生産コストは削減することが求められるので、人員を増強するわけにはいかない。そこで業務を効率化する方法として、ITへの依存度はますます高まった。

 そうした中、突如として降ってわいたのが、サーバルームの電源容量不足という問題だった。生産装置を開発する部門が業務拡大のために、既存のサーバコンピュータをスケールアウトで拡張しようとしたところ、電力がまかなえないことが発覚したのだ。

 これに対応するには、サーバルームがある事業所の社屋全体の電源容量を増やす工事を行わなければならない。そのためには、変電設備を含め、膨大な工事費用が掛かる。

 A社では、社屋ビルの建て替えを5年後に予定しており、その際には現状のサーバルームではなく、本格的なファシリティを備えたデータセンターも併設することにしていた。しかし、今のままでは、そこまで待つことはできない。

 そこでA社が決断したのが、分散しているサーバコンピュータの物理集約と仮想化技術の採用という、新しい試みへの挑戦だった。

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