涙をぬぐって歩を進めるオープンソース「行く年来る年2007」ITmediaエンタープライズ版(1/2 ページ)

2006年12月31日にすべての活動を終了したOS/2に後ろ髪引かれる思いではじまった2007年。本年も、オープンソースの世界ではさまざまな出来事があった。

» 2007年12月27日 10時06分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

2006年12月31日にすべての活動を終了したOS/2に後ろ髪引かれる思いではじまった2007年。本年も、オープンソースの世界ではさまざまな出来事があった。

Ubuntuの人気が高まった2007年

 まず、2007年にリリースされたメジャーなディストリビューションについて列挙してみよう。

ディストリビューション リリース日
FreeBSD 6.2 1月15日
Vine Linux 4.1 2月22日
Red Hat Enterprise Linux 5 3月14日
Debian GNU/Linux 4.0 4月8日
Ubuntu 7.04 4月19日
OpenBSD 4.1 5月1日
Fedora 7 5月31日
Momonga Linux 4 8月19日
Nature's Linux 1.6 8月20日
openSUSE 10.3 10月4日
Ubuntu 7.10 10月18日
Red Hat Enterprise Linux 5.1 11月7日
Fedora 8 11月8日
NetBSD 4.0 12月19日
2007年にリリースされたメジャーなディストリビューション

 Xenを用いた仮想化環境を正式に採用したRed Hat Enterprise Linux(RHEL) 5。3月のリリース時には、積極的に仮想化を強調していたRed Hatだが、XenSourceがCitrixに買収されたあたりから、Xenという言葉の利用を避けている印象がある。RHEL 5.1も仮想化技術面でのブラッシュアップが図られているが、リリース文でも「Xen」の文字が出てこないのは興味深い。

 Ubuntuのようにおおむねスケジュール通りのリリースが行われていくディストリビューションがある一方で、Gentoo Linuxのように、プロジェクトがうまく行っていないコミュニティーも出てきている。人間関係に問題の一端があるようだが、コミュニティーでは人の問題が大きな要素となるのは今後も変わらない傾向となりそうだ。

著作権訴訟は別ステージへ

 UNIX OS所有権に関する訴訟に結論が出たのも今年の大きなニュースだ。ここ数年来、SCO GroupはUNIXおよびUnixWareの著作権をめぐり、所有権を主張していたが、2007年8月、連邦裁判所はUNIXの著作権はNovellが所有権を持つとの判決を下した。この判決の1カ月後、SCOは米破産法11条の適用を申請、この問題は1つの結末を迎えることとなった。

 特許がらみの話を続ければ、現在、SCO以上にオープンソースコミュニティーからやっかいな存在として見られているのが、「オープンソースの特許侵害、235件」と主張するMicrosoftだろう。

 かつてはLinuxを敵視していたMicrosoftの姿勢も(少なくとも表面的には)大きく変化した。2006年11月のNovellとの「歴史的な」提携以後、2007年6月にLinspireおよびXandros、そして10月にターボリナックスと、Linuxディストリビューターとの提携を相次いで発表している。特許侵害を明かして具体的な訴訟を起こすのではなく、ライセンス契約を結ぶよう迫るMicrosoftの動きには賛否両論あるが、WindowsとLinuxの混在環境が一般的なものになってきている以上、いかなる形であれLinuxを無視できないMicrosoftの苦しい事情がかいま見える。いずれにせよ、ユーザーからすれば、 Linux環境をActive Directoryへ統合するようなソリューションがほどなく提供されるという点で、メリットも少なくない。

 そんなMicrosoftの頭痛の種となるのが今年リリースされたGPLv3だろうか。MicrosoftがNovellなどのLinuxディストリビューターと交わした特許協力契約では、GPLv3でリリースされるコンポーネントについては対象外となっている。この点でユーザーはいまだ特許問題でリスクを抱え続けることとなる。SambaのようにGPLv3の移行を決定しているプロジェクトが増えつつある中、この潜在的な問題がどのように推移していくかは注視しておく必要がある。

 GPL関連で話を続けると、2007年後半はGPL違反による訴訟が幾つか発生した。9月に、Software Freedom Law Center(SFLC)がBusyBoxの開発者2名の代理人としてMonsoon Multimediaに対して訴訟を起こしたのがことのはじまりだった。

 組込みシステムなどで用いられることが多い軽量のユーティリティソフトウェア「BusyBox」。BusyBoxプロジェクトでは以前からBusyBoxを用いている利用者のうち、GPL違反の疑惑があるケースを独自にまとめていたが、今回のように裁判所に提訴するまでには至っていなかった。それがSFLCの力添えもあり、司法の場でGPL違反が問われることになった。

 訴訟を起こされたMonsoon Multimediaの反応は早く、すぐに和解協議に入ったこともあり(10月末に和解)、雑多なニュースに埋もれていったこの訴訟だが、SFLCが矛先をHigh Gain AntennasとXterasysに向けたことで、再燃した。SFLCは12月に入り、米Verizon Communicationsも同様に提訴、Monsoonから数えると4件のGPL違反を短時間のうちに提訴したことになる。このうち、MonsoonおよびXterasysとは和解が成立している。ほかの2社もこれに追随するとみられるが、損害賠償金の支払いなども求められているため、場合によっては法廷での争いに発展するかもしれない。

 米ガートナーのリサーチ担当副社長を務めるマーク・ドライバー氏は、2010年までに、業務用ソフトウェア製品の80%以上にオープンソースのコードが含まれるようになると話している。こうした訴訟が普及段階にあるオープンソースに暗い影を落とさないことを祈るばかりだ。

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