UTMはSMB市場の勢いで大企業市場を狙う――米WatchGuardのCEO

ウォッチガードは、UTM(統合脅威管理)アプラインス用OSの最新版を発表。来日したワンCEOは、大企業向けUTM市場への参入を表明した。

» 2008年02月21日 15時25分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 ウォッチガード・テクノロジーズジャパンは2月21日、UTM(統合脅威管理)アプラインス用OSの最新版となる「Fireware 10」および「Edge 10」を発表。合わせて来日した米WatchGuardのジョン・ワンCEOが2008年度の事業展開を説明した。

 最新版は、セキュリティ対策と接続、管理の3分野で機能強化を図った。2008年第2四半期に発売を予定する国内向け製品では、日本語版のGUIが初めて提供されるという。

 まず、セキュリティ対策では未知のマルウェアの動作を阻止する「Real-Time Virus Outbreak Detection」機能が搭載された。同機能は、電子メールべースのマルウェアを対象に、新しいマルウェアが発見された時点でパターン分析を行って、同社のデータベースにハッシュキーを登録する。シグネチャで検知、隔離する従来の機能と比べ、未知のマルウェアの検知・隔離を迅速にできるようになるという。

 Webフィルタリング機能では従来のhttp通信に加えてhttps通信もサポートした。このほか、IPS(不正侵入防止システム)のパフォーマンスを向上させ、電子メールの添付ファイルを隔離する機能を追加している。

 接続機能では、新たにSSL VPN接続に対応した。Active DirectoryやRADIUS、LDAPを利用したシングルサイオン機能にも対応し、トークンなどを利用した二要素認証もサポートする。また、H.323やSIPをサポートし、IP電話やビデオ会議などのアプリケーションを容易に利用できるようにした。

 管理面では、GUIのカスタマイズができ、リポーティングツールの拡充を図った。同社のセキュリティセンターが提供する情報を管理者へ直接通知するアラート機能が向上し、アラートからアプライアンスの設定変更をするといった運用性を高める機能を追加している。このほか、SNMPバージョン3をサポートし、設定ファイルのバックアップ機能を搭載した。

 価格は、Fireware 10搭載の500ユーザー以上向けモデル「Firebox X Peak」が190万円から、同500ユーザー以下向けモデルの「Firebox Core」が56万円から、Edge 10搭載の50ユーザー以下向けモデル「Firebox Edge」が25万円からとなる。「Live Security」サポート利用の既存ユーザーは無償でアップグレードできる。

SMBの実績を維持しハイエンド市場へ参入

 来日したジョン・ワンCEOは、2008年度の事業展開について、大企業向けUTM製品の市場投入を表明し、アジア・太平洋地域での業績拡大に注力すると話した。

ジョン・ワンCEO

 同社は、これまで従業員数500人以下の中堅・中小企業向けUTM製品で販売実績を拡大してきた。「長期的な成長戦略としてハイエンドUTM市場でポジションを獲得する」(ワンCEO)といい、昨年は株式の非公開化や経営体制の刷新を図った。特に経営陣は、CiscoやMicrosoftなどで大企業向け製品を担当したメンバーを招いた。ワン氏自身もSymantecやLANDeskのCEOを経験し、「販売チャンネルを含め、大企業を相手にするノウハウ、人的リソースに不足はない」と述べた。

 UTM市場は、同社によれば2007年は前年比で26%拡大し、今後も30%台の成長が見込まれるという。ワンCEOは製品展開について、「現在の実績ある技術を大企業での運用に耐えるものに仕上げていく。新技術を大々的に展開する考えはない。製品の信頼性をより確実なものにするだけだ」と話す。また、運用管理では他社製品を利用する企業に配慮し、相互運用性を強化していくとしている。

 現在、同社の地域別の売り上げ構成は50%を北米地区、30%を欧州地区が占め、残りがアジア・太平洋地区などとなっている。日本はアジア・太平洋地区の3分の1程度を占めるといい、全社規模に占める割合は5%になるとみられる。

 ワンCEOは、「一般的なITベンダーのアジア・太平洋地区の売上比率は平均25%。早期に20%台に引き上げ、特に日本市場でのシェア拡大は重要だ」と話した。2008年度は販路拡大やサポート強化、トレーニングプログラムの拡充を図るとしている。

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