バーチャルな世界でビジネスをするには(4/4 ページ)

» 2008年03月13日 08時00分 公開
[Dave Greenfield,eWEEK]
eWEEK
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本質的な問題

 仮想世界アプリケーションは多数存在するが、クリティカルマスに達していないことが同技術の普及の足かせとなっている。

 現時点では、Second Lifeは確かに認知度が高く、おそらくコンシューマー分野で最も広く利用されている仮想世界だろうが、エンタープライズプラットフォームとして広範に配備され、信頼を得るようになるためには、多くの課題を克服しなければならない。

 最大の問題の1つが拡張性である。Second Lifeではサービス停止が頻繁に発生し、Second Life内で企画されるソーシャルイベントは多数のユーザーに対応することができないのが実情だ。

 使い勝手の問題も解決されていない。ユーザーは自分のPCにクライアントをダウンロード、設定しなければならず、Second Lifeのインタフェースは標準的なビジネスアプリケーションよりも使い勝手が悪い。

 これらの問題はいずれも、企業のIT部門にさまざまな影響を与えるだろう。ActiveWorldsとThereは、Second Lifeよりも少し使いやすいが、それでも仮想環境の中で活動するためには、いくつものキーストロークとマウス操作をマスターしなければならない。

 加えて、ビジネス上の問題もある。ビジネスユーザーは、Second Lifeの決済処理システムの混乱に不満を抱いている。また、Second Lifeの戦略的方向性を示していないことに対するLinden Labsへの批判も広がっている。

 コンプライアンスという課題もある。最近では、企業はすべての電子的通信を記録することが求められるようになってきた。仮想世界サービス/プラットフォームの中には一元的なログ機能を提供しているものもあるが、そうでないものもある。

 仮想世界は新しいフロンティアでもあるため、西部開拓時代と同様、法律の適用という面でもいろいろと問題がある。

 Linden Labsでビジネス問題を担当するギンス・ユーン副社長によると、Second Lifeのインフラを企業ニーズに合わせる計画だという。しかしSecond Lifeの拡張性、パフォーマンス、使い勝手、セキュリティが改善されたとしても、それだけでは不十分だ。Second Lifeであれほかの仮想環境であれ、3D世界がビジネスにとって有用なものになるためには、孤立した存在であってはならない。

 一般に、新興市場で支配的地位にある企業(例えば、仮想世界市場におけるSecond Life)は、相互運用性によって恩恵を受けることは少ない。こういった企業は、独自の閉鎖的エコシステムを構築し、そこに顧客を囲い込もうとするものだ。

 たとえ仮想世界ベンダーが相互運用性を実現しようと思っても、3D世界の技術的問題は計り知れないほど多岐にわたる。アバター設定やセキュリティ証明は、異なる仮想世界間で移行できるようにする必要がある。クロスプラットフォーム間のコミュニケーションや旅行も必要になるだろう。オブジェクトの移動も必要だ。また、通貨交換のための施設も作る必要がある。

 IBMが昨年10月に開催した「Virtual World Interoperability Community Summit」というカンファレンスは、まさにこういった問題に対処することを目的としたものだ。この会議では、仮想世界の参加企業のリストがまとめられた。しかし相互運用性をめぐる議論は始まったものの、過大な期待は禁物だ。

 「2D Webでは技術標準に到達するのに15年かかった。仮想世界でこの期間が大幅に短縮されるとは思えない」とユーン氏は話す。

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