「IT野麦峠」「うさぎ症候群」を改善した在宅勤務の魅力職場再考のススメ(2/4 ページ)

» 2008年03月27日 08時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

在宅勤務はサボれない

 「在宅勤務ではさぼれない」「会社で仕事をする方が楽」――トライアルを通じて参加者から出た意見である。「NTTデータの在宅勤務制度はまじめで厳しい」(北村氏)からだ。

image 安藤亮氏

 NTTデータでは、在宅勤務に詳細な報告を必要とする。始業と終業時に上司に連絡を入れるのはもちろん、業務の途中経過やイレギュラーで入った業務も逐一上司に報告して進ちょくを明らかにする。在宅勤務のアウトプットはサーバ上で共有して、部門内で明確にする。在宅勤務を取得すると、専用のIP電話を自宅に導入するため、会社にいる時と同じように電話がかかってくる。

 上司の目の届かない場所だからこそ、1日のスケジュールやアウトプットを明確に出す「さぼれない仕組みになった」(北村氏)。

 事実、在宅勤務制度を取得する社員を管理する上司からは、「在宅勤務を導入するまでは仕事を管理しているようでできていなかった」「業務の見える化が進んだ」といった声が挙がってきた。成果を逐一報告するスタイルを制度に取り入れたことで、「上司の業務管理に対する意識も向上した」(経営企画部経営企画担当の安藤亮氏)。

社内の紙文化を変えた

 在宅勤務にはセキュリティ対策が必要不可欠だ。持ち出しPCや自宅PCからの情報漏えいが問題に挙がる中、自宅で勤務するには、堅牢なセキュリティ設備を構築する必要がある。

 NTTデータでは、制度取得者全員にシンクライアントPCを貸与したり、10分以上PCから退席する場合にはPCをシャットダウンして、施錠保管したりするといった細かなポリシーを定めた。資料の印刷も禁止した。

 「これまで会社の外で仕事をするという考え自体があまり無かった。制度導入を機に全社的にセキュリティ意識が向上した」と安藤氏は言う。トライアルでは全体の約3分の2が「仕事の生産性、効率性が向上した」と答えた。印刷を禁止することで逆に業務の効率が落ちるのではないかという声もあったが、問題は出なかった。「結果として、職場においてペーパーレス化が進んだ」(安藤氏)という。

取得者の30%はエンジニア

 制度を取得している人はどのような職種なのだろうか。NTTデータでは、スタッフや管理部門などに加え、エンジニアが多いことが特徴だ。

 エンジニアは本番の試験や作り込みの段階では顧客先に出向かなければならないが、企画書の作成や仕様の検討、テストなどは自宅で行った方が効率良くできる場合もあるという結果が出た。「開発部門の制度取得者の割合は全体の30%。世間的に見ると多いはず」(人事部人事担当の糸川弘孝課長)。

 「外資系の在宅勤務制度のように結果を出せばいいというものではない」と述べるのは人事部人事担当の有馬順理氏。細かな上司承認プロセスをルール化し、月に8日の制度取得で業務改善につなげたのがNTTデータの在宅勤務制度の特徴だ。

 職場で気持ちよく仕事をしたい――という個人の思いが、在宅勤務制度を作り、社内の文化をも変えていった。

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