「IT野麦峠」「うさぎ症候群」を改善した在宅勤務の魅力職場再考のススメ(1/4 ページ)

劣悪な労働環境が問題となっているIT業界において、大手企業を中心に在宅勤務制度の導入が進んでいる。各企業の制度導入までの道のりはさまざまだったが、共通の効果も見えた。制度化に当たり外せないポイントは何だろうか。

» 2008年03月27日 08時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 3K(きつい、帰れない、給料が安い)、エンジニアの人材不足……IT業界を形容する言葉にはネガティブなイメージがつきまとっている。日付が変わるまで働くためプライベートな時間が取れない、残業時間が月に100時間を超えるなど、過酷な職場環境が問題となっている。

 そのような中、2006年に大手ITベンダー4社が在宅勤務制度の本格導入を掲げ、2007年11月に日本HP2008年2月にNTTデータが在宅勤務制度の全社導入を相次いで発表した。この動きはIT業界において、多様な働き方を認める制度として注目を集めている。

 在宅勤務制度の導入には、管理やセキュリティ、社員のモチベーション維持などが問題に挙がる。取材を通じて、各社が社風やビジョン、労働環境などをかんがみて、独自の制度を導入していることが分かった。各企業の事例から、在宅勤務を制度化するポイントを探ってみよう。

「IT野麦峠」「うさぎ症候群」状態だったNTTデータ

 「IT野麦峠」「うさぎ症候群」といった働きにくい要因が職場にはあった――NTTデータの公共ビジネス推進部、危機管理・防災ドメイングループに務める北村有紀氏は振り返る。

image 北村有紀氏

 同社の職場では、毎晩夜遅くまで仕事をする状態や開発現場に女性が点在する状態が続いていた。これらを、過酷な労働に従事した製糸工場の女性の物語「あゝ野麦峠」になぞらえて「IT野麦峠」、さみしさで死んでしまううさぎに例えて「うさぎ症候群」と北村氏たちは表現した。育児休暇や短時間勤務など制度面は充実していたが、女性社員率の低さや離職率の高さなどは依然として残っていた。

 「経営層と社員が共同で掲げたNTTデータのビジョンは、多くの社員には遠い言葉のように聞こえていた」と北村氏は言う。現場レベルでの改善は進んでいなかったからだ。

 職場を改善して経営のビジョンを具体化したい――北村氏は、ビジョンの1つである「ワークスタイル・イノベーション」宣言を具体化するために在宅勤務の制度化を考えるようになった。すぐさま制度化を進めるメンバーを募り、10人が集まった。20もの部門を回って在宅勤務の必要性を説き、課題をヒアリングした。

「在宅勤務は必要なのか」に対する答え

 2006年7月から在宅勤務制度のトライアルが始まった。期間は1年間。参加者や管理職、同僚に4度のアンケートを実施し、その都度制度の改善点を洗い出した。

 「なぜ在宅勤務が必要なのか」――トライアルの当初、上司の多くが彼女たちにこう告げた。NTTデータでは過去に何度か在宅勤務制度の導入を検討したが、実現には至らなかった。職場にいない社員をどのように管理するのか、誰に対しても平等な制度の基準が作れるのかが不透明だったからだ。「在宅勤務は毎日自宅で勤務するもの」と考える上司も多く、多様な働き方を認める土台は、まだできていなかった。

 だが、トライアルを進めていく中で、これらの懸念は杞憂であることが分かってきた。

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