大規模なコラボレーション活動を成功に導く5つの原則――パート1Magi's View(1/3 ページ)

創造的活動を行うコミュニティーが成功するには、幾つかの原則を見て取ることができる。ここでは、そうした原則を紹介していこう。

» 2008年04月07日 00時00分 公開
[Charles-Leadbeater,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 Linuxの商業的な成功については、そのサポートコミュニティーが既成概念にとらわれない方式でアイデアの創造、共有、試験、廃棄、開発を進めていく方法を自発的に体系化できたためといっても過言ではないだろう。こうしたLinuxを取り巻く活動には、We-Thinkプロジェクトを成功に導く5つの原則を見て取ることができる。今回解説するのは、そのうち最初の2つについてである。

本稿は最近出版された『We-Think: The Power of Mass Creativity』からの抜粋である。

コア

 物事には最初の出発点が必要であり、余人の追随を許さない積極的な姿勢で取り組もうとする先駆的な人間がいない限り、何事も成し遂げられないものである。創造的活動にいそしむコミュニティーもそうした先駆者の知的活動をベースとして始まるものであるが、Linuxの場合もリーナス・トーバルズ氏が開発に没頭した成果をインターネットに公開したカーネルがその出発点となっている。

 有力な貢献者や開発者を呼び寄せてコミュニティーを形成させる鍵となるのは、1つの優れたコアの存在である。コアとなる存在は魅力的なものである必要があるが、新たに手を加える可能性が残された未完成状態でもなければならない。既に完成されたものでは改善の余地が乏しいからだ。ジェーン・マクゴニガル氏はI Love Beesのようなゲームを成功に導くコアについて論じており、その初期状態が多義性を有すことでさまざまな解釈を可能にしているかが大きく影響するとしている。こうしたI Love Beesにしろ、線虫(C. elegans)のゲノムを解読しようとするワームプロジェクトにしろ、これらは各自が異なるスキルを有する多数の人間の協力によってのみ解決できるというタイプのパズルなのである。

 例えばカリフォルニア大学バークレー校の政治学者スティーブン・ウェーバー氏は、成功するオープンソース系ソフトウェアプロジェクトは“多次元的”で複雑化する傾向にあるがゆえにさまざまなスキルを持つ人間を歓迎することになるとしている。またトーマス・クン氏はその科学革命史において、新たに生じる知的コミュニティーにおけるコアの有す多義性についてまとめている。クン氏が論じているのは、少人数の先駆者が集うグループが1つのブレークスルーを達成することで新たな科学的パラダイムが生じてきたという可能性である。

(そうしたブレークスルーは)科学的な論争に陥らせることなく、支持者たちを引きつけ続けておくに足る十分な先駆性を有していた。そして同時に、新たに形成された探求者のグループが遭遇する問題をすべて協同で解決するだけのオープン性を備えていたのである。

 しかしながらこうしたコアが発展していくには1つの条件が付随する。つまり追加や修正という誰でも行える作業については、オリジナルの創造者たちが自ら手を引く必要があるのだ。真の意味での革新性をもたらすには、多様なスキル、見識、知識を持つ人々の間で、共通する問題の解決を目的とした創造的な意見交換が行われなくてはならない。We-Thinkというのも、こうした意見交換を導く上での新たな一手段である。優れたコアとは創造的な意見交換を出発点とするものであり、そうした活動に自分も貢献したいと考える人々を引きつける存在なのだ。

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