PDAの辞書検索を軽快に、富士通が組み込みソフトを強化

富士通は組み込みソフトウェア製品群「Insprium」に辞書検索や家電連携の新製品を投入し、UI制御製品の機能強化も図った。

» 2008年05月09日 14時57分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 富士通は5月9日、組み込み機器向けミドルウェア製品「Inspirium」シリーズの新製品と、ユーザーインタフェース(UI)の制御および開発向け製品の機能強化を発表した。いずれも5月14日から提供する。

 新製品は、広辞苑など大規模辞書の検索を高速化する「辞書検索ライブラリ V1.0」とネットワーク対応テレビと家電製品を連携するための「HomeNetworkライブラリ for ネットTV V1.0」の2製品。

 辞書検索ライブラリ V1.0は、全文検索機能やマルチメディアデータに対応し、PDAなどメモリサイズの小さな機器で大規模辞書の検索を迅速にできるようにする。富士通では、全文検索に利用するインデックスや、本文テキストのデータサイズを圧縮する独自技術を開発。例えば広辞苑第五版のデータサイズを48%圧縮でき、約23万項目について1〜2秒程度で全文検索を実施する。検索結果から画像や動画、音声データを呼び出すこともでき、専用の電子辞書製品並みの機能を提供するという。

電子辞書データ形式「MPWING」で143Mバイトになる広辞苑第五版のデータサイズが69Mバイトになったという

 HomeNetworkライブラリ for ネットTV V1.0は、ネットワーク対応テレビからネットワーク対応の家電製品を制御するためのライブラリ。例えば、テレビを視聴しながらリモコンで風呂の給湯機に指示を出し、給湯完了のメッセージをテレビ画面上に表示するといった連携ができるようになる。

テレビへ給湯が完了したと給湯器からメッセージを送信したデモ

 機能強化されたのは、UI実行基盤の「UIマネージャー V2.0」とGUIライブラリの「UIライブラリ V2.0」。UIマネージャー V2.0では新たに3DデザインのUIをサポートし、XMLで配置パターンを定義するだけで2D、3Dの表示を軽快に切り替えられるようになった。文字サイズに合わせて画面レイアウトを自動変更する機能も提供された。

携帯電話用ブラウザでは文字サイズをある程度柔軟に変更できるが、メニュー画面などでは文字サイズに合わせて画像データを多数用意しなければならなかった

 UIライブラリ V2.0では、GUIの自動テストツールが新たに提供され、変更されたプログラムの不具合を検証するリグレッションテストに必要な工数を削減できるようになった。テストのログを自動で記録・再現でき、GUIの表示を記録して正常な実行結果との照合を効率的に行えるという。富士通の場合では、同ツールを利用することでテスト期間を20日間から2日間に短縮できたとしている。

 組込みソフトウェアテクノロジ事業部の長田格事業部長によれば、Inspriumシリーズを採用した製品は2003年からの累計が1000万台を突破し、担当部門も昨年12月に事業部化された。「従来はインキュベーター的な存在だったが、ビジネスを遂行する立場に変わり、これから本腰を入れる」(同氏)

 各製品の販売価格はいずれも個別見積り。対応環境はLinux、Windows、μITRONなど。今後3年間にInsprium製品全体で60億円の売り上げを見込む。

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