NBAファイナルを支えるデータインフラビデオでなくデータが重要

NBAのデータインフラは、試合経過や統計情報を全世界で即座に共有することを可能にしている。

» 2008年06月11日 08時00分 公開
[Scot Petersen,eWEEK]
eWEEK

 もうNBAではなく、NDA(National Data Association)と呼んだ方がいいのかもしれない。

 ボストン・セルティックスとロサンゼルス・レイカーズが対戦するNBAファイナルでは、データが重要なポジションでプレーする。

 NBA(National Basketball Association:全米バスケットボール協会)のケビン・ガーネット氏、ポール・ピアース氏、コービー・ブライアント氏およびポー・ゲイソル氏は、硬質床材の上で「ショウ」を興行するが、その舞台裏では最先端のデータインフラがビデオと統計データを試合会場のTDバンクノース・ガーデン周囲のモニター、オンライン上、そして全世界に瞬時に配信する。

 ボストンで開幕するNBAファイナル第1戦に先立ち、NBAで運用と技術を担当するスティーブン・ヘルマス執行副社長は「どんなスポーツリーグであれ、その中核となるのはデータと統計システムだ。ビデオが重要のように思えるかもしれないが、データを重視する人が増えている」と語った。

 データの収集はコートサイドから始まる。そこではNBAのPrecision Time Systemがスコアボードとシュートのクロックを、レフリーのベルトユニットとホイッスル、そしてフロアを囲んでいるLED照明システムに接続している。レフリーはベルトユニットでクロックを開始し、ホイッスル内のセンサーを通じて停止することができる。クロックが停止するとLEDシステムが点灯する。クロックの表示がゼロになったときもLEDが点灯する。

 このタイミングシステムはコートサイドの統計情報センターにリンクされており、いつ誰がクロックを停止したかが記録される。このデータは、タッチスクリーンとIDS(Information & Display Systems)のソフトウェアを搭載したLenovoのノートPC「X60 Tablet」に送られる。

 統計データ担当者はコートのレイアウトをタッチすることにより、どちらのチームがボールを支配しているか、誰がシュートしたか、シュートは成功か失敗か、誰がアシストしたか、誰がリバウンドを取ったか、誰がファウルを犯したかなどを記録する。ノートPCに収集されたデータは、メディアおよび放送局向けにバンクノース・ガーデン周囲のモニタに即座に送信される。

 セキュリティおよびデータの整合性を確保するため、これらのノートPCでは必要最低限の機能以外はすべてそぎ落とされている。Windows XPで動作するが、それ以外にシステム上で動作するのはIDSの統計ソフトウェアだけである。ボストン・セルティックスの技術担当副社長、ジェイ・ウェッセル氏によると、USBやWi-Fi機能も無効にされているという。

 データフィードはT-1専用回線を通じて、ニュージャージー州セコーカスにあるNBA本部にも送信され、そこで情報がオンライン化され、NBA.com上でリアルタイムの試合情報とボックススコアが提供される。NBA Entertainmentでインタラクティブサービスを担当するスティーブ・グライムス副社長によると、このWebサイトは今年、12億アクセスおよび3億ビデオストリームという過去最大のトラフィックを記録したという。

 NBAはTVネットワークから提供されるビデオフィードもコントロールしており、これらのフィードをNBA.com上でオンライン化するとともに、チーム、プレーヤー、プレーの種類、試合中の時間などの情報を各ビデオセグメントに付加している。このデータはデータベースに保管され、NBAおよび各チームはレビュー、指導、ゲーム作戦策定用のツールとして特定のプレーシナリオを呼び出すことができる。

 NBAのヘルマス氏によると、このデータインフラはスポーツ界でもユニークなシステムだという。「これは統計データ、タイミング情報、スコアを全世界の視聴者に配信する唯一のシステムだ。ゲームそのものがデータの収集と統計によって規定されるのだ」と同氏は語る。

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