在庫管理が販売管理、生産管理、購買管理にまたがっているが、これは適用業種やベンダーによって在庫管理がどのような意味合いでどのモジュールに含まれるかが異なることを示している。仕入れ在庫の管理が重要であれば、購買管理の範囲となる。製造在庫の管理は生産管理の枠内で行われる。受注情報と密に結びついた出庫管理が必要であれば、販売管理側に含めることになるだろう。
このように在庫管理という言葉は同じでも、在庫の内容やそれがどのモジュール内に含まれるかといったことが変わってくるので注意する必要がある。債権・債務処理も同様であり、債権処理を販売管理内に含めることもあれば、債務管理を購買管理内に含めることもある。
若干の差異はあるものの、上図のうちのどのモジュールを備え、どういった追加モジュールを持っているかをチェックすれば、おおむねどのERPパッケージもこの標準モデルに当てはめて考えることができる。
実際のERPプロダクトを標準モデルに当てはめてみよう。ここでは「中小」(年商5〜50億)や「中堅L」(年商50〜100億)を主な対象とする3つの代表的なERPパッケージを取り上げてみた。
OSKの「SMILE BS」は「SMILE BS販売」「SMILE BS会計」「SMILE BS人事給与」という3つのモジュールを持っている。「SMILE BS販売」の名称は「販売」となっているが、実際には販売管理と購買管理の両方の機能を持っている。
このように「販売管理」の中に「購買管理」も含めるベンダーも少なくないので留意する必要がある。OBCの「奉行新ERP」は構成モジュールの数が比較的多く、特に人事・給与が細かく細分されている。顧客管理や資産管理などの追加モジュールも用意されている。
SAPの「SAP Business One」は明確にモジュールという区分けをしていないが、販売管理/購買管理/財務会計を基幹業務としてグループ化し、生産管理のほかに顧客管理の機能を追加している。
OSKやOBCといった国内ベンダーとSAPといった海外ベンダーとでは備えるモジュールに違いがある。財務会計、販売管理、購買管理はどちらも備えているが、国内ベンダーでは生産管理がなく人事、給与が備わっているケースが多く、海外ベンダーではその逆で生産管理はあるが人事給与がないことがある。
これは今回の2つ目のテーマであるERP導入の流れと密接に関係している。実はユーザーはERPの各モジュールを一斉に導入するわけではなく、ある程度のステップを踏んで順に導入していく傾向があるのだが、その導入ステップを分析してみると興味深いことが分かる。
「手軽に導入できるSAP」を中堅企業に届ける
「SAPはハードルが高い」というイメージが払拭されつつある。長期的な費用を考慮すると、SAPは実は安価と考え、SAP Business All-in-Oneを導入する中堅企業が増えている。SAPが提供する実現機能確認シートに注目だ。一覧をチェックすれば購入前に費用の詳細が分かる。機能追加の際の費用も「見える化」できる。
なぜSAP ERPを導入するのか――女性衣料品通販ピーチ・ジョンの場合
ピーチ・ジョンは、女性向け下着などのカタログ通販で人気を集める。ピーチ・ジョンが、2009年の稼働を目指してSAP ERP導入プロジェクトに取り組んでいる。ネット販売店舗が急拡大し、継ぎ足すように対応してきたシステムをSAPでどう変えていくのか。2007年11月のワコールの完全子会社化に伴い内部統制強化も課題となっている。
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