こうした数回の部分導入を経る過程において、失敗を経験したユーザーが抜本的な解決策としてERPリプレースへと踏み切ることになる。これまでの部分導入とは違って全社的な取り組みが求められるため、ERPリプレースの成功・失敗要因はエンタープライズにおけるERP導入に近いものとなる。エンタープライズにおけるERP導入の成功・失敗については既に数多く取り上げられているのでここでは詳しくは述べないが、主要なハードルを以下にピックアップしてみた。
「現状業務及びシステム分析(失敗要因分析)ができているか」「ERPリプレースを推進する責任者に然るべき権限が与えられているか」
「システム刷新だけではなく、業務改革を行う意思を持っているか」
「利用部門を適宜参画させ、生じる変化について同意を得ているか」
「刷新したシステムの全体像を把握できる人材を自社内に確保しているか」
上記のようなハードルを越えられないと、形の上ではERPリプレースはしたものの利用部門からは支持されない、ベンダー依存度が以前よりもさらに高くなってしまって運用保守コストがさらに上がるといった問題が生じることになる。
上記に挙げたようにERPリプレースのハードルはいずれも高いものであるが、経営者がリーダシップを発揮することによって越えられるものも少なくない。実際、そうやって自社業務を効果的に改善した中堅中小企業の例も出てきている。そうした先進事例が紹介されることによって、中堅中小企業においても戦略的なERP導入が増えてくるのではないかと期待している。
今回は中堅中小企業のERP導入に横たわるさまざまなハードルという観点で整理をしてみた。次回以降ではこうしたハードルを越えたユーザーが実際に実現した業務改善効果について、ケーススタディを通じて見ていくことにする。
「手軽に導入できるSAP」を中堅企業に届ける
「SAPはハードルが高い」というイメージが払拭されつつある。長期的な費用を考慮すると、SAPは実は安価と考え、SAP Business All-in-Oneを導入する中堅企業が増えている。SAPが提供する実現機能確認シートに注目だ。一覧をチェックすれば購入前に費用の詳細が分かる。機能追加の際の費用も「見える化」できる。
なぜSAP ERPを導入するのか――女性衣料品通販ピーチ・ジョンの場合
ピーチ・ジョンは、女性向け下着などのカタログ通販で人気を集める。ピーチ・ジョンが、2009年の稼働を目指してSAP ERP導入プロジェクトに取り組んでいる。ネット販売店舗が急拡大し、継ぎ足すように対応してきたシステムをSAPでどう変えていくのか。2007年11月のワコールの完全子会社化に伴い内部統制強化も課題となっている。
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