Microsoftの次なるリーダーは誰だバルマー氏の後任もいない(1/4 ページ)

ビル・ゲイツ氏が去ったあと、Microsoftにおけるリーダーシップはどうなるのだろう。

» 2008年06月26日 09時34分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 厳密に言えば、ビル・ゲイツ氏はMicrosoftを完全に離れるわけではない。ただ、同社とかかわる時間を大幅に減らすのである。

 5月下旬、カリフォルニア州カールズバッドで開催された「D Conference」でゲイツ氏に面会し、Microsoftの最高経営責任者(CEO)であるスティーブ・バルマー氏と最後の共演を果たす直前に、カクテルを飲み交わしながら言葉を交わした。このとき同氏は、これまでは自分の時間の8割をMicrosoftでの仕事に、残りの2割をBill & Melinda Gates Foundationの活動に充てていると話していた。来る7月1日からは、こうした割合が逆転する。ゲイツ氏は主な注力対象を慈善事業にシフトさせるつもりなのだ。

 実際には、ゲイツ氏はしばらく前からMicrosoftの日常業務に携わっていない。

 例えば、Microsoftが果敢に挑戦し、そして失敗したYahooの買収に関しては、自分はバルマー氏の友人として相談には応じたものの、直接的な関与はしなかったと、D Conferenceの会期中に話している。また特に、最高ソフトウェアアーキテクトのレイ・オジー氏や、最高リサーチおよび戦略責任者のクレイグ・マンディー氏といった後継者に本格的に道を譲った2007年以降は、ビジョンリーダーとしての役割も著しく減少しているという。

 Microsoftの会長であり、筆頭株主でもあることから、ゲイツ氏と同社の接点は今後も常に存在するはずだ。だが、同氏が会社に極めて大きな影響をおよぼしていた時代は、すでに過去のものとなっている。

 独裁者から慈善家へと少しずつ姿を変える中、ゲイツ氏は2年前に引退の意向を明らかにした。もっとも同氏の離脱は、バルマー氏が新CEOに就任した2000年から始まっていたともいえる。カリスマ性のある創業者から次の者にバトンを渡すお膳立てをするのは、どの企業にとってもはなはだしい重荷であり、Microsoftもゲイツ氏からバルマー氏への世代交代には8年を要した。法人として40周年を迎えるまでの間に、こうした変化が同社に多大な影響をおよぼすのは間違いないだろう。

 ただし、力が弱まったとはいえ、ゲイツ氏がMicrosoftのほかの幹部にとって今もなお重要な存在であることは否定できない。

 その理由の1つは、同氏の持つ技術的な専門知識である。

 ゲイツ氏が1995年5月に記した「押し寄せるインターネットの波(The Internet Tidal Wave)」というメモは、同氏が企業の未来を見据えるうえで、技術知識をバックグラウンドに置いていることを最もよく表したものかもしれない。ティム・バーナーズ=リー氏が、承認済みもしくは未承認の標準に基づいたWebブラウザとWebサーバを初めて開発した1991年、ゲイツ氏はまだ見当違いの方向を向いていた。1990年代前半にWebが急成長を遂げ始めたにもかかわらず、同氏はダイヤルアップネットワークのAOLやCompuServeに固執していたのだ。

 しかし、最終的にインターネットを正しくとらえてからは、これがWindowsの競争上の脅威となることをすぐに見抜いた。1995年5月のメモは、WebがMicrosoftから標準に対する制御権を奪う可能性があると明言し、同社こそがインターネットをコントロールするために、全製品ラインにわたる強力な統合戦略を打ち立てる必要があると説いたものである。Microsoftは今日に至っても、ゲイツ氏が13年前に書き付けた構想を基本理念として掲げているのだ。

 バルマー氏とゲイツ氏とでは、タイプが明らかに違う。バルマー氏自身、D Conferenceでは、「なんといってもわたしはWindows 1.0開発チームにいたから」と、冗談めかしてみずからを語っていた。

 バルマー氏はむしろ販売やマーケティング側の人間であり、同氏のやり方が、現在のMicrosoftの経営方法を形作ったといえる。こうしてみると、同社のリーダーシップには2つの系統があることが分かるだろう。1つは、ゲイツ氏の血統を継ぐオジー氏やマンディー氏のような技術者系、もう1つが、最高執行責任者(COO)のケビン・ターナー氏に代表される、販売のバックグラウンドを持つ幹部らの系統だ。

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