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» 2008年06月30日 05時29分 公開

ビル・ゲイツ、去る――1つの時代に幕(2/7 ページ)

[Stan Gibson,eWEEK]
eWEEK

奇跡を起こす青年

 メガネをかけた青年は、1986年に億万長者となった。20歳のゲイツ氏が友人のポール・アレン氏と非公式のパートナーシップを結び、ニューメキシコ州アルバカーキでMicrosoftを創業してから、わずか11年後のことである。

 同氏の指揮下で開発された製品は、Windowsをはじめ、どれも当初は人気がなかった。市場に受け入れられたのは数世代版を重ねてからであり、圧倒的なシェアを獲得するまでにはさらに数バージョンの改訂が必要だった。1988年、MicrosoftはLotusを抜き、世界最大のソフトウェア企業の座を手中に収めた。

 1983年当時は創刊からかかわった「PC Week」の編集者をしており、現在はeWEEKに勤めているジョン・ドッジ氏は、次のように話している。「『Windows 1.0』はまったく使えなかった。だがMicrosoftは、ハードウェア以上の機能、処理速度、メモリを提供すると約束し、ついにようやく実用に耐える『Windows 3.0』が登場した」(ドッジ氏)

 Windows 1.0は、1983年に発表され、1985年に発売された。一方のWindows 3.0は1990年、ゲイツ氏の仕切りの下、ニューヨークで華々しいデビューを飾った。専門家らはここに至っても、個人用コンピュータ向けのグラフィカルオペレーティングシステムとして、Windowsは1984年にリリースされたAppleの『Macintosh』OSに大きく差をつけられていると評していた。

 市場で注目されるのが遅かったため、競合社はMicrosoftの技術力とゲイツ氏のビジネススキルを侮っていた面がある。だがゲイツ氏は、このときもまた市場の発展を待ち、行く末がはっきり見えた時点で行動を開始した。事業を拡大させていくプロセスで、同氏はしばしば先駆者を追放し、市場を乗っ取ってきた。こうしたやり方によって、Microsoftはときに競合社の反感を買い、反トラスト行為を追求する声も次第に高まっていった。

 Microsoftの成功のカギは、密接なパートナーシップから始まり、結局は険悪な物別れに終わったIBMとの関係にある。

 事のいきさつをまとめてみよう。Digital Researchのゲイリー・キルドール氏が、同氏の開発した「CP/M」OSのライセンス契約をIBMと締結するのに躊躇していたとき、ゲイツ氏はIBMに同技術を提供してもよいと持ちかけた。ゲイツ氏はSeattle Computer Productsから「QDOS(Quick and Dirty Operating System:ティム・パターソン氏が制作した、CP/Mとよく似た仕組みのOS)」を買い取り、同ソフトウェアを「MS-DOS」としてIBMにライセンス提供する。ここで肝要なのは、ゲイツ氏がほかのハードウェアベンダーにも同OSのライセンスを販売する権利を取得した点だ。例えばそのうちの1社であるCompaqは、数年後にIBMのハードウェアをあっさり抜き去っている。相当に図太い神経が要求される、ゲイツ氏ならではの腹芸だったといえるだろう。

 IBMとのパートナーシップの重要性を認識していたゲイツ氏は、数バージョンに及ぶDOSのライセンス契約を通して同社との関係強化を図り、ついには1985年、DOSの後継OSである「OS/2」の共同開発契約を取り付けた。

 悲運のOSとでもいうべきOS/2のバージョン1.1は、1988年にリリースされた。IBMは、同社の膨大なコーポレートPCユーザー層に働きかけ、高価でプロプライエタリ性が強く、ハードウェア要件も高い同OSへの移行を促そうとしたが、ゲイツ氏は開発チームを分けて、Windowsに注力することを強く主張した。Windowsは、実質的にOS/2と同じ機能を備え、より安価でハードウェア要件が低く、さらには無数の互換PCベンダー製機器に対応していたのである。

 ゲイツ氏のもくろみは、さながらIBMというゴリアテに石を投げるダビデのごとく、無謀なものに見えたはずだ。それは極めて大胆かつ危険な賭けだったが、今では誰もが知っている通り、勝算は十分だった。普通なら尻込みするところを、ゲイツ氏は敢行したのである。IT業界ではMicrosoftよりはるかに高い地位に居座っていたIBMは、OS/2に巨額の資金を投じた揚げ句、最終的にはさじを投げて、PC事業そのものから徐々に撤退していった。

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