CRMの新潮流

「おサイフケータイ」ビジネスの将来像アナリストの視点(2/4 ページ)

» 2008年08月04日 08時00分 公開
[松枝秀如(矢野経済研究所),ITmedia]

製品(端末)開発の方向性

 携帯電話端末にとって、FeliCaチップを搭載することは、いままでの「薄く」「軽く」といったコンセプトから逆行するものであり、メーカーは設計、試作、製造工程すべてにわたり変革を要求されることになる。さらに、チップの搭載は、製品検証にも時間がかかり、3カ月を製品投入サイクルとする携帯電話メーカーが対応するには大きな負荷になる。それに加え、昨今では携帯端末の価格が一般ユーザーにも明示されるようになり、コストダウン要求も厳しく、メーカーサイドにとってはさらに困難な状況が続いている。

 その中で、メーカーとしては基本的にはキャリアサイドの要求に応えながらも、おサイフケーイを必要としないユーザー向けには、さらに薄く軽くのコンセプトを訴求していく考えである。そして、シルバー向けなどのターゲットゾーンには、機能の絞り込みを行うなどの取り組みも考えているようだ。そのほか、F1層(20代から30代の女性層)向けにデザイン性を訴求する端末や、20代から30代の男性向けにビジネス用途としても使える機能性を含んだ端末や、10代をターゲットとしてアミューズメント性を重視し、使って楽しい携帯端末も今後の開発の方向性となろう。このように、これらの方向とおサイフケータイ機能をリンクさせていくことが、端末メーカーにとっては最大のテーマといえよう。

 さらに規格としては、NFCの動向を注視している。NFCは、チップを通して、UIM上の非接触アプリケーションの起動実行が可能となる。また、リムーバブルなUIMの為、携帯端末機種変更時にデータ移行が容易になるといった特性を持っているため、NFC規格の動向が次世代の開発動向にも大きな影響を与えることになるだろう。

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