無能なITマネジャーと呼ばれないためのキーワードは「PUE」Trend Insight(2/2 ページ)

» 2008年08月04日 05時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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PUE 1.2実現を陰で支えるEYP MCF

ケネス・リンド氏 ケネス・リンド氏。コンテナ型データセンターを設置するに当たってのポイントは「水源」「電源」「ネットワーク」の3つであると話す

―― 写真を見る限り、HP PODは一般的なドライコンテナのようですね。

リンド そう。ISO(国際標準化機構)規格を満たす一般的なコンテナです。長さ40フィート(約12メートル)、幅8フィート(約2.4メートル)のいわゆる40フィートコンテナで、高さは9.6フィート(約2.9メートル)のハイキューブコンテナ(背高コンテナ)となります。演算ノードとして使った場合に3520ノード、ストレージコンテナとして使う場合に1万2000台のHDDを格納できます。

―― コンテナ型データセンターについては、サンが「Sun Modular Datacenter S20」を、IBMも「Portable Modular Data Center」(PMDC)を発表しており、大手ハードウェアベンダーではHPは後発です。言葉悪くいえば、HPはこの分野でフォロワーということになるのでしょうか。

リンド (笑)。先に発表したことで得られる先行者利益はあるでしょうが、だからといってその製品がベストかどうかは別の話ですよね。HP PODについていえば、HPは先行者利益を狙うのではなく、優れた製品を出すことにこだわりました。付け加えるならば、製品の発表はおっしゃるとおり後発ですが、コンテナを使ったサービスはアウトソースとして数年前から提供してきました。そうした経験の蓄積が今回の製品開発にも生かされています。

―― HP PODの販売戦略を教えてください。当面は北米のみの展開となるのでしょうか。

リンド はい。9月もしくは10月に北米市場に対してローンチします。米国では、こうしたコンテナ型データセンターは保守の目的以外で人が立ち入らない“ほとんど無人の建物”という取らえ方をされていますが、地域によっては建物と見なされない可能性もあります。そうすると耐震性などさまざまな法的規制が変化してくるわけです。グローバルに展開するに当たっては、各地域でのそうした法的規制を確認する必要がありますので、北米以外の地域については1四半期ほど遅れて提供していく予定です。もちろん、顧客の反応を見ながらということになりますが。

―― HP自身はHP PODをすでに使っているのですか? ローンチのタイミングで自社での利用実績もしくはビックユーザーを併せて紹介するとみているのですが。

リンド 現時点では使っていません。ただし、弊社のデータ戦略の中にHP PODを統合していく計画はあります。ローンチのタイミングでは、あなたが考えられているもののいずれか、もしくは両方を組み合わせた発表となるかもしれませんね。

PUE 1.2は“コンプリートなソリューション”の証左

―― HP PODではPUE 1.2を実現されているということですが。

リンド はい。これが実現できたのは、HPが“コンプリート(完全)なソリューション”を提供している証左になると考えます。PUEのコンサルティング、設計といった部分は、他社がそれに匹敵するサービスを提供できないと自信を持っています。

 将来のデータセンターについて考えるべきは、これからさらに高密度化が進むということ。それによって、より高い電力効率が求められるということです。そこに対する解をわたしたちは提供しているのであって、コンテナ型データセンターありきの話ではありません。

 順を追って説明します。HPでは現在、「スマート・クーリング・ソリューション」と呼ぶデータセンター向けの冷却ソリューションを提供しています。幾つかの段階がありますが、弊社のエンジニアが現地調査や顧客へのヒアリングを通じ、ラックや冷却設備の最適な配置を提案する「サーマル(クイック)アセスメント」が最初のステップとなるでしょう。

 そして、静的な状況に基づく最適化では十分でない部分――例えば、実運用で局所的に起こり得る突然の温度上昇など――に対応するために、動的な最適化を図るための「ダイナミック・スマート・クーリング」(DSC)を用意しています。簡単に言えば温度センサーを利用した冷却設備の動的なコントロールによって“冷やしすぎ”をなくそうというものです。本当に適正な温度というのは、動的に変化しますからね。

 こうしてデータセンターの最適化は図られていきますが、将来的にはさらに効率のよいデータセンターが求められるでしょう。それに対する1つの解がHP PODなのです。コンテナ型データセンターはそれだけでデータセンターを構築できますし、既存のデータセンターを補完することもできます。今すぐにではないにせよ、必要とする企業にとっては極めて重要な意味を持ちます。顧客のニーズは確実にある製品ですが、市場規模の評価が難しいとは感じています。

 これは量産型のビジネスではありません。実際の納入に当たっては、確実にコンテナのカスタム化が必要になるでしょうし、顧客の要求仕様にどの程度合わせるのかも顧客によって異なります。HP PODは最短で6週間での出荷を可能にしていますが、顧客のニーズに沿ったものを素早く提供できるという体制を敷いていることも信頼につながると考えます。

―― 量産型のビジネスではないだけに、顧客が持つ痛みをどこまで理解して適切な答えを返してくれるのかは気になっています。データセンター向けのビジネスで、HPが他社と比較して抜きんでているところがあるとすればそれは何ですか?

リンド そこで米EYP Mission Critical Facilities(EYP MCF)の買収が効いてきます。HPは、データセンター関連のコンサルティングを手掛けるEYP MCFの買収を2007年11月に発表し、2008年2月には買収を終え子会社化しました。HPが蓄積していたデータセンターサービスやソリューションに、EYP MCFが持つ大規模データセンター向けの技術計画の立案や設計、運営サポート、さらには電力効率向上にかんする専門知識などが加わったことで、データセンターすべてを見渡したサービスの提供を可能にしているのです。現時点でここまでのソリューションを提供できるのはHPだけであると自信を持っています。

―― 「米HP、コンテナ型のデータセンター「HP POD」を発表」でも触れたのですが、「HP POD」というネーミングはかつてHPが販売していた「HP iPod」を想起させます。HP iPodがその後どうなったかは言うにおよばず、まるで量産ビジネスであるかのような印象すら抱かせるこのネーミングを個人的には少し危ぐしているのですが。

リンド HP PODは「HP Performance Optimized Data Center」の略です。データセンターのパフォーマンスを最適化するという思いがそこに詰まっているわけですが、PODというネーミングにすることで、そのモジュール性も強調できると考えています。あぁ、あなたが望むならiPodよりたくさんの音楽を入れることもできますけどね(笑)。

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