明日のことが今日分かる、近未来メディア創刊

ユーザーの知恵が集まれば明日のことが高い精度で今分かってしまう――そんなメディアが創刊した。

» 2008年08月06日 18時39分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 Predictionは8月6日、近未来を報ずるWebメディア「あした新聞」の創刊を発表した。さまざまな事象の予測結果をニュースとして報ずる大胆なサービスとして動向が注目される。

 あした新聞は、話題となっている事柄について、「予測市場」の技法を使って得られた予測結果を「あしたニュース」として提供するもの。注目度が高いニュースを「トピックス」とし、そのほかに経済、社会、スポーツ、エンタメなどのジャンルが用意される。

「今」のニュースから「明日」のニュースを予測する(写真は参考資料より抜粋。現時点でこの通りの未来になるかどうかは不明です)

 「予測市場」の技法自体は、「自由市場における価格は、将来的な事象の発生可能性に関する情報伝達のメカニズムによって決定される」という半世紀以上前に発表された学説に基づいてさまざまなシステム化が図られてきたが、Predictionは、「証券方式」と「投票方式」、「WOC(wisdom of crowds:群衆の叡智)方式」という独自開発の予測エンジンを開発。これを用いて予測を行う。Predictionでは大学などでこの分野を研究している方々をアドバイザリボードに迎えるなどし、アカデミックの世界で得られているノウハウを取り込んでいる。

 技法自体は、ある事象に対してその予測確率をどう算出するかという手法の部分で、株式に見立てるか、競馬などのように複数の結果予想を設定し、それぞれのオッズを設定するか、あるいは自由記述の文字列から出現回数などを評価基準に予測内容を可視化するかということである。いずれもユーザー参加型であり、仮想通貨などを用意することで参加意欲を駆り立てようとしている。

 予想されるビジネスストーリーとしては、まずユーザーを増やすため、サイト内での仮想通貨を用意し、気軽なギャンブル感覚で参加者の拡大を図る。ユーザーが増えていくことで予測の精度も高まるはずなので、その先にあるのは、信頼性の高い予測コンテンツを有料情報として他社に提供、といったところだろう。極端な話をすれば、競馬などで予想業者が存在するのと同じように、あらゆる事象に対してPredictionが予想業者の地位を狙うということである。そして、参加するユーザーには、予測精度への貢献度から仮想通貨を現実の通貨に転換するなどして利益の還元を図るという構造が“予測”される。

 もちろん、集合知の産物である予測結果に対する信頼度を疑うユーザーも少なくないだろう。それ故、各分野のマーケット情報に精通した人間にその予測結果を解説させるというコンテンツなども付加していく予定であるという。

ピュアな形でCGMをビジネスに

 新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、Webニュースサイトなどの既存メディアは、基本的にはすでに起こった出来事を報ずる“過去のメディア”であるといえる。未来への指向性は識者のコラムといった程度の露出であろう。エンターテイメント分野などであれば、精度の低い近未来予測をコンテンツとして取り上げてもいわゆる“しゃれ”で許されることもあろうが、例えば調査会社が同じ事をすれば、それはビジネスモデルの崩壊を意味してしまう。だからこそ、少しでも精度の高い情報にすべく、日々取材や調査を重ねるのが既存メディアのセオリーとなっている。

 一方、あした新聞はCGM(Consumer Generated Media)を本当の意味で活用したサービスとなっている。CGMという言葉が用いられるようになって久しいが、実のところ、CGMをどうマネタイズするかは企画段階でよく問題になる。多くの場合、CGM単体でビジネスになるケースは稀で、何かしら別のサービスとCGMを連動させるという手法が採られるケースが多い。

 テックスタイル・グループでは、数年前から、いわゆる「集団知」や「暗黙知」といったものをコンテンツ化する取り組みを進めてきており、codeなにがし群衆の叡智サミットといった形で結実させてきた。Predictionのサイトは昨年から存在しており、「予測市場」を扱うのは従来通りだが、今後はメディアとしての展開を図っていく。「みんなの意見は案外正しい」(Wisdom Of Crowds)を信念に据え、「予測マーケット(市場)」を確立できるかどうか、注目される。

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