PCの電源断後における、各パーツの冷え方を測定した。測定結果から、電源断後、マザーボードの発熱要因であるパワートランジスタ付近は比較的速く冷えているのに対し、チップセット付近やHDD付近はなかなか温度が下がらないことが分かる。
ケース背面に備えられている、ケースファンの効果について測定した。今回実験で使用したケースでは、背面に2か所ケースを取り付けられる。そこで、このファンを使用しない場合と、それぞれの位置にファンを取り付けた場合で、発熱の違いを調査した。
実験結果からは、ケースファンを使用することで、とくにケース内上部の温度は明らかに低下していることが分かる。ただし、ファンの設置位置については、ケース内の温度にはあまり影響を与えないようだ。
実験結果としては以上のようになったが、これらはあくまでもパーツそれぞれの温度を測定したものであり、それぞれのパーツがどれだけ熱を発しているか、というのを直接表しているわけではない。例えば、マザーボードの測定結果ではCPU部分の温度上昇があまり見られなかったが、これはCPUクーラーがCPUの発する熱を放出しているためだ。
一方、HDDはCPUほどの熱は発していないが、それ自体に質量があり、熱をためやすい構造となっているので温度上昇が大きく、また一度温度が上がるとなかなか下がりにくい。しかし、PC内の熱発生源がどこなのかを把握する材料にはなるだろう。
一般にPCの発熱というと、CPUの発熱のみが注目される傾向があるが、実験結果からはマザーボード自体やメモリ、HDDなど、それ以外の部分からの発熱も無視できないことが分かる。とくに、HDDは温まりやすく、そして冷めにくいため、HDD周辺にファンを設置することはHDDの高寿命化に効果的だと思われる。
また、記事中ではあまり触れなかったが、グラフィックボードの発熱も意外に無視できない。今回使用したグラフィックボードは1世代前のものであるが、最新のグラフィックボードではその発熱もより大きくなっているようだ。そのため、環境によってはその付近の冷却についても考慮する必要があるだろう。
本記事は、オープンソースマガジン2006年12月号「計る測る量るスペック調査隊 第13回 PCの発熱を測れ!」を再構成したものです。
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