「利用者と店舗の満足度を追求する」――nimocaの戦略とは西日本鉄道の交通ICカード

福岡県で展開されている交通系ICカード「nimoca」。nimocaには、カードの利用者と加盟店舗の満足度を追求し、地域の活性化を目指す戦略があるという。

» 2008年08月22日 08時00分 公開
[杉浦知子,ITmedia]
西日本鉄道の杉本将隆氏 8月19日に講演を行った杉本将隆氏

 2008年5月より西日本電鉄がサービスを提供している交通ICカード「nimoca」は、福岡県内の一部の鉄道やバス、商業施設で利用できる。8月には発行枚数が10万枚を突破し、2010年からはJR九州、福岡市交通局、JR東日本が提供する交通ICカードと相互利用できるようになる。

 交通ICカードには、シームレスに使えて会計を早く終えられるという利用者側および、レジでの決済スピードを上げられるという加盟店側の効用がある。「nimocaはそれだけでなく、利用者と加盟店の満足度も追求した事業戦略を展開している」と話すのは、西日本鉄道ICカード事業部の杉本 将隆係長。nimocaの利用者と加盟店の満足度を高めることで地域活性化を目指す。それをCRM(顧客関係管理)が支えているというnimocaのビジネスモデルを紹介する。

天神地区を盛り上げるnimoca

 nimocaは現在、福岡県の天神大牟田線の全61駅と福岡市内の天神地区を中心とした553の商業施設に対応している。西日本鉄道が運営するスーパーマーケットなどの商業施設に加え、コンビニエンスストアのローソンや百貨店の三越などでも利用できる。杉本氏は「グループや業種を超えたサービスを提供しており、利用者の満足度は高い」と胸を張る。

 商業施設での利用は、電子マネーだけでなく現金で決済をしてもポイントが付与される。貯まったポイントはチャージ金額として電子マネー決済で利用できる。ポイントサービスでは「貯めやすさ、使いやすさ」を重視しているという。

 ICカードの利用情報や会員情報を分析してマーケティングに役立てることで、加盟店の満足度も追求している。店舗で利用できるICカードは、会員登録を必要とする。登録された会員情報を利用して、ターゲット顧客にダイレクトメールを発送するといったプロモーション活動を展開できる。ただし、会員の個人情報はnimocaの発行などを行うニモカが保有しているので、このようなプロモーション活動はニモカが代行する。

 「nimocaの普及により、住民が地元で買い物をする機会が増えたり、店舗間が連携してプロモーションなどを展開したりすることで、地域が盛り上がってほしい」と杉本氏は期待を込める。

地域の活性化を支えるCRM戦略

 nimocaの顧客情報を分析するシステムには、日本テラデータの「Teradata データベース(Teradata)」が採用された。Teradataは、大容量の明細データを並列処理し、検索や更新を行えるデータベースだ。

 nimocaの利用情報と会員情報はセンターシステムに集められ、Teradataに反映される。加盟店などは、専用のWebサイト上からTeradataで分析されたデータを閲覧できる。これが、加盟店向けのCRM戦略の仕組みである。

 加盟店が閲覧できる情報は、カードを利用した日付、利用時間、決済方法、購入点数、決済金額など。こうしたデータから「1万円以上買い物をする人は15時台に多い」といった利用者の情報が得られる。店舗側は「15時台には販売員の数を増やす」といった戦略を立てられる。

日本テラデータの田中康寛氏 田中康寛氏

 日本テラデータで流通・サービス ソリューション事業部インダストリーコンサルティング部部長兼プリンシパル・コンサルタントを務める田中康寛氏は「顧客満足度を高めるマーケティングを行うには、ターゲットの顧客層を明確にすることが重要」と話す。nimocaのビジネスモデルは、顧客満足度を高めるマーケティング戦略の格好の例という。

 交通機関と商業施設で共通して使えるnimocaの特性を生かすことで、「どの路線のどの駅を使い、どの店で真っ先に買い物をしたか」といった詳細な行動履歴を得られる。行動履歴からは、“どの店舗に人が集まりやすいか”などといった情報が分かる。田中氏は「ここで得られたデータを、店舗間で連携したプロモーションを行う上での施策に役立ててほしい」と話す。

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