ブレードサーバでグリーン&仮想化

涼しい風を送れ――ブレードサーバのエアフロー決め手は熱のゾーンディフェンス

ブレードサーバの可用性において重要なのが、発熱したパーツを冷やすエアフロー(空気の流れ)である。搭載するプロセッサや各パーツの意味合いにより、CPUブレードのレイアウトには工夫が凝らされている。

» 2008年09月01日 08時00分 公開
[大神企画,ITmedia]

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信頼性の敵“熱”への対策

 高度に高集積化されたブレードサーバにとって、その信頼性や可用性を維持するにあたり天敵となるのが、「熱」である。電力を消費することによって駆動するコンピュータのパーツにとって、発熱は避けて通ることのできない。大量の電力を消費して計算処理を行うプロセッサはもちろん、チップセット、メモリ、ハードディスク、グラフィック、ネットワークなど、あらゆるパーツは稼働中に熱を発している。

 熱を発しても問題なく稼働し、信頼性、可用性に影響を与えないのであれば、熱対策はこれほどまでに議論されてこなかったかもしれない。熱問題が取り沙汰されるのは、パーツ自身が発熱するのにもかかわらず、高温にさらされ続けると誤動作や障害発生を招いてしまうからだ。

 そのため、コンピュータではさまざまな熱対策が講じられている。タワー型サーバ、あるいはデスクトップPCのように、筐体内部にある程度の空間がある場合には、熱対策は比較的容易だ。しかし、筐体内部にパーツが隙間なく配置されたブレードサーバの場合、各パーツを配置するデザイン、発熱したパーツを冷却するエアフロー、そして空気の流れを起こす冷却ファンは、非常に重要となる。

熱に弱いハードディスクは最前面に

 コンピュータを構成するパーツの中で最も熱に敏感なのは、ハードディスクだ。高温にさらされ続けるとすぐにトラブルが発生する。そのため、ハードディスクを冷たい空気が入ってくるブレードの最前面に配置している製品が多い。

 NECは、ハードディスクのホットスワップも考慮して、早い時期からハードディスクを最前面に配置してきた。旧型のブレードサーバでは、前面にも冷却ファンを設置してハードディスクを直接冷却する仕組みを持つ製品もあった。現行の「SIGMABLADE」最新モデルでは、最前面にハードディスク、次にメモリモジュールを配置して、最も高温になるプロセッサをブレードのほぼ中央に配置している。

 発せられた熱は、シャーシ背面の冷却ファンによって強制的に排出する。冷却ファンは、大型シャーシのSIGMABLADE-Hでは上下に8つ、小型シャーシのSIGMABLADE-Mでは上部に5つ配置されており、ブレードとファンを直線的に配置することで“熱溜まり”の発生を防いでいる。

 デルの新しいPowerEdgeブレードサーバも、ハードディスクを最前面に配置する設計だ。デルのブレードは、ハードディスクの次にプロセッサが横並びで配置され、その後ろにメモリモジュールが置かれている。ただし、このデザインはXeonプロセッサを採用したブレードの場合。Opteronプロセッサを採用したブレードでは、ハードディスクの後ろにプロセッサが中央に縦並びになっており、プロセッサをはさむ形で両側にメモリモジュールがある。このデザインの違いは、Opteronアーキテクチャがメモリコントローラを内蔵していることや、プロセッサの発熱量の差異によるものだ。

PowerEdge XeonモデルPowerEdge Opteronモデル Xeonモデル(画像=左)とOpteronモデル(画像=右)とでレイアウトが異なる

 富士通の「PRIMERGY TRIOLE BladeServer」も、ハードディスクが最前面、続いてプロセッサがあって、メモリモジュールという配置順になっている。PRIMERGYの特徴としては、メモリモジュールがNICやFC HBAと横並びでブレード最背面にあることだ。

思想によりユニークな設計のブレードも

 ユニークな配置なのは、HP。プロセッサの種類によって配置が異なるものもあるが、ハーフハイトの小型ブレードの場合、最前面にプロセッサとハードディスクが重なるように配置されている。ハードディスクはホットスワップを意識して前面に置き、プロセッサは冷たい空気で最初に冷やすというデザインだ。ただし、Opteronプロセッサの場合はプロセッサが中央にあり、フルハイトのブレードではプロセッサとストレージは重ならず、前面に横並びで配置されている。冷却ファンは、シャーシに上下10個のファンがあり、負荷に合わせて回転数がインテリジェントに変化する。

PARSECの解説視覚化されたエアフロー シャーシにゾーンを設定し、インテリジェントにファンをコントロール(画像=左)、シャーシ内の空気の流れを視覚化してみた(写真=右)

 IBMの「BladeCenter」の場合、ブレード本体のハードディスクは基本的にブート用のOSシステムとアプリケーションを入れておく場所と割り切っている。重要なデータは外部のストレージに格納するという考え方だ。したがって、ハードディスクはホットスワップ対応になっておらず、場所もブレード最背面にある。吸気側の最前面にプロセッサが置かれ、ブレード中央にはメモリモジュールがあるという構造だ。

Calibrated Vectored Coolingの解説HS21 XMにおけるメモリ熱量 他ベンダーから「シャーシの互換性を優先したため設計が古くエアフローが非効率」と指摘されることもあるIBMだが「Calibrated Vectored Cooling」技術によりシャーシ全体の冷却機能の最適化を図っている(画像=左)、例えばHS21 XMに2Gバイトのメモリを8枚実装した場合でも、熱が78℃を超えることはない(画像=右)。他社製の同等機種においては、製品の限界である85℃を超え96℃に達するものもあるという(IBM調べ)

 サンの「SunBlade」の場合、ブレードのサイズがやや大きく、プロセッサによってかなり異なるデザインになっている。最前面にハードディスクが配置されているのは、どのブレードにも共通しているが、Xeonプロセッサの場合はハードディスクと横並びで最前面、OpteronプロセッサとUltra SPARC T1/T2プロセッサはブレードのほぼ中央に配置されている。メモリモジュールは、プロセッサの後ろか横並びに置かれている。

 日立の「Blade Symphony」は、ハイエンドモデルの「BS1000」とミッドレンジモデルの「BS320」とでは異なるデザインになっている。BS1000のブレードは、一般的な長方形の形状ではなく、正方形に近い。最前面には、Xeonプロセッサとハードディスクが横並びに配置されているが、その間に仕切りが配置され、プロセッサの熱がハードディスクなどのパーツに悪影響を与えないように工夫されている。Itaniumプロセッサを搭載したブレードには、ハードディスクは内蔵されていない。BS320は、一般的なブレードのように細長い形状であり、最前面にハードディスク、その後ろにプロセッサ、さらにメモリモジュールという配置順になっており、シャーシ中央に横並びで配置された5つの冷却ファンで空冷する仕組みになっている。

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