HPのEDS買収に見るIT産業構造変化の予兆Weekly Memo(1/2 ページ)

HPによるEDSの買収が8月26日に完了した。HPとしてはITサービス事業を拡充するのが狙いの買収劇だが、IT産業全体から見ると、新たな構造変化の予兆ともいえそうだ。

» 2008年09月01日 09時51分 公開
[松岡功ITmedia]

EDSの顧客ベースを手に入れたHP

 米Hewlett-Packard(HP)が8月26日、ITサービス大手の米Electronic Data Systems(EDS)の買収完了を発表した。5月13日の合意発表から3カ月余り。その間、米当局やEU(欧州連合)からの承認を受け、買収手続きが完了した。買収額は139億ドル。HPにとっては、2002年の米Compaq買収(190億ドル)に次ぐ大型買収となった。

 HPのマーク・ハード会長兼CEOは今回の発表にあたり、「今日はHPとEDS、また我々のお客様にとって歴史的な日となった。両社が統合したことで、我々はIT業界で最も幅広く競争力のある製品、サービス、ソリューションを提供するグローバルリーダーになる」とコメント。HPの傘下に入ったEDSを新事業グループとして引き続き率いるロン・リッテンマイヤー社長兼CEOも、「今日は胸を躍らせるような新しい時代の始まりの日となった。EDSはHPの世界最高レベルの技術を活用し、ITサービス市場を根底から再定義するチャンスを得た」との歓迎コメントを発表した。

 歴史的な日――。HPのハードCEOがそう語った背景には、両社の統合によってITサービス分野でのHPの存在感が一気に高まったことがあげられる。両社を合わせた2007年度時点のITサービス事業における売上高は約380億ドル。同分野で540億ドル規模の売上高を持つ宿敵、米IBMを追撃する態勢が整ったわけだ。HPは2007年度の総売上高でIBMを上回ってIT業界の世界最大手となったが、IBMの主力事業であるITサービス分野でもトップの座を目指す構えだ。

HP EDSの買収を完了させたHPのマーク・ハード会長兼CEO

 今回、正式にHPの傘下に入ったEDSは、ITサービスを幅広く手がけているが、最大の特長は世界に100カ所以上のデータセンターを持ち、アウトソーシング事業を得意としているところにある。かつては自身が傘下に入っていた米General Motorsをはじめ、顧客ベースは政府機関および全産業にわたって幅広く、しかも有力企業が名を連ねている。HPがEDSを買収したのは、その顧客ベースを手に入れたかったからにほかならない。

 一方のHPは、2005年春に経営トップに就任したハードCEOが、徹底した経営効率化とパソコン事業のテコ入れなどによって、当時業績不振にあえいでいた同社を復活へと導いた。そして年間総売上高でIBMを上回った今、ハードCEOにとってはEDS買収によって、満を持してITサービス事業に大攻勢をかけた格好だ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ