先週、IT分野の話題をさらった「Google Chrome」。Googleが9月2日に無償配布を始めたこの新Webブラウザは、企業のIT活用にどのような影響をもたらすのか。
「GoogleがWebブラウザ戦争に参戦」、「Google、Microsoft占有市場に攻勢」、「二強の覇権争いは最終決戦へ」――先週、新聞やネットメディアにこんな見出しの記事が賑やかに載った。Googleが9月2日に、世界100カ国以上で新たなWebブラウザ「Google Chrome」(β版)の無償配布を始めたからだ。
Google Chromeの内容については、すでに詳細な報道がなされているので関連記事等をご覧いただくとして、ポイントは既存のWebブラウザよりもシンプルなデザインで高速処理を可能とし、使いやすさを追求していることだ。しかもオープンソースとしてソースコードを公開し、世界のソフト開発者の協力を募って改良を進めていく方式を採った。
Googleはこれまで検索サービスを皮切りに、ネット上で表計算などの機能を無料で提供する各種サービスを増やしてきた。そして今回はさらに、WebへアクセスするためのゲートウェイとなるWebブラウザまで無償配布することで、Googleのネットサービスを利用しやすくし、広告収入の増加につなげたいというのがGoogleの狙いだ。
Google Chromeを公開した今回のタイミングも絶妙だ。宿敵、Microsoftが8月27日にWebブラウザの最新版「Microsoft Internet Explorer 8(IE8)」を公開したばかりで、ユーザーの関心がWebブラウザに集まっていたところを狙った。だが、Googleの米国本社および日本法人で行われた記者会見では、必要以上の刺激を避けるためか、Microsoftの名前を極力出さないようにしていたようだ。
とはいえ、Googleの戦略の背景にはMicrosoftが7割超のシェアを握るWebブラウザ市場に風穴を開け、将来的にはMicrosoftの“本丸”であるWindowsプラットフォームの重要性を低下させていこうという思惑があるのは明白だ。
ただ、Googleは記者会見を通じて、「Googleにとって、すべてのビジネスはWebブラウザから始まるが、Webブラウザ市場で大きなシェアを獲得することが必要条件ではない」とのメッセージを発信している。Googleの幹部はその理由について、「Webブラウザを使いやすくすれば、より多くの人がGoogleのサービスを利用してくれるようになる」と言い、さらに「多くのユーザーは、Webブラウザに選択肢があることすら知らない。そんな状況を改善したい」と語っている。
つまり、今回GoogleがGoogle Chromeを投入した最大の目的は、Webブラウザそのものの存在感を高めることにある。
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