外資系IT大手の日本法人トップ人事がもたらす意味Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年09月22日 10時13分 公開
[松岡功ITmedia]
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間近に迫る? 日本IBMのトップ交代

 サンがいつ頃、日本法人の新社長を迎え入れることができるか分からないが、状況からして経営経験のある日本人を探しているとみられる。

 サンのリム氏が日本法人社長として初めて記者会見を行った3日前の9月15日、SAPジャパンの新社長兼CEOに、アドビシステムズ日本法人の社長を務めていたギャレット・イルグ氏が就任した。この人事はすでに9月3日に発表されていたもので、イルグ氏の就任もさることながら、今年1月1日に同社社長兼CEOに就いたばかりの八剱洋一郎氏の突然の退任が関心を集めた。

 イルグ氏が報告義務を担うSAPアジアパシフィックジャパン地域のプレジデント兼CEOであるジェラルディン・マクブライド氏は、今回の人事発表のコメントの中で、「ギャレットは日本市場で培ったこれまでの豊富な経験と知識をもとに、SAPジャパンを成功に導き、素晴らしい結果を生み出してくれると確信している」と語っているが、日本法人トップがなぜ短期間で交代したかについての言及はなかった。

 ソフトウェア業界に詳しい関係者によると、「SAPジャパンの直近の業績は決して悪くないが、より高い予算の達成とグローバルで戦略を一本化するための日本法人トップの適任者としてイルグ氏を据えたのだろう」という。

 外資系日本法人では、一本化したグローバル戦略を展開するために、本社から社長を送り込むケースも少なくないが、アドビシステムズの前には日本BEAシステムズの社長も務めていたイルグ氏は、むしろ日本のソフトウェア市場に精通していることを買われた格好だ。加えて同氏は、BEAシステムズのシニアバイスプレジデント兼アジアパシフィック地域代表などを務めた経験もあることから、SAPとしては同氏を日本法人トップに据えることでグローバル化とローカル化の両方を一層推進しようという構えのようだ。

 先週の動きからサンとSAPジャパンのトップ人事について述べてきたが、振り返ってみると、今年は4月にマイクロソフト、6月に日本オラクルの社長が交代した。さらに昨年12月には日本ヒューレット・パッカードの社長も交代しており、10カ月足らずの間にこれだけの外資系IT大手の日本法人のトップ人事が重なったことは、筆者の記憶にはない。

 外資系日本法人の場合、トップにどんな人材を据えるかで、例えばグローバル化とローカル化のバランスに対する本社の戦略が透けて見える。とくに日本のIT市場はかねて特殊な構造と言われ、ローカル化に重点が置かれていたケースが多かったが、最近ではITそのもののオープン化とともにグローバル化が進んできた。その流れで見ていくと、この10カ月足らずでの各社のトップ人事は、総じてグローバル化への傾注から再度ローカル化にも力を入れようという意図が感じられる。マイクロソフトがその典型だ。

 さらに、日本のIT市場もこれからSaaSおよびクラウドコンピューティングへと大きく変化していくとみられる今、これだけのトップ人事が重なったのは、単なる偶然ではないようにも思える。

 さて、もう1社、外資系IT大手の日本法人でこれまで社名が出ていないところがある。最大手の日本IBMだ。今年度で社長在任10年目を迎えた大歳卓麻氏が、同社の新年度に入る来年1月1日をもって後継者にバトンを渡すのではないかとの見方が、業界関係者の間で高まっている。発表があるとすれば10月初旬か? 後継者は誰か?

 日本IBMの場合はトップ人事もさることながら、経営首脳の布陣にも注目しておく必要がある。米本社の影響力を推し量るためだ。それも含めて、もし近いうちに同社のトップ人事があれば、それを通じて外資系IT大手の日本法人として最も成熟した企業像の新たな姿を分析してみたい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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