みんなが参加できるERPを目指す――米Infor

ERP大手の米InforでCTO(最高技術責任者)を務めるブルース・ゴードン氏は、パートナーシステムを簡単に取り込めるといった新アーキテクチャの差別化要素について力説した。

» 2008年09月25日 16時10分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 「SAPやOracleとの差別化要素はパートナー企業の既存システムなどを簡単に取り込めること、新機能を課金せずに提供すること」

 ERP大手の米InforでCTO(最高技術責任者)を務めるブルース・ゴードン氏は話す。Inforは、旧Baanや旧SSAのBPCS、旧EXEのWMS(倉庫管理システム)など買収製品を多く抱える。今回、On Rampと呼ぶシステム連携機能を全製品で活用できるようにする。新アーキテクチャの特徴は、SOAをベースにし、既存システムだけでなく、サプライヤーなどのパートナー企業や顧客のシステムも取り込んで1つのシステムを構成できることだ。

新サービスの構想を話すゴードン氏

 ゴードン氏はこの仕組みを「ビジネスネットワーク」と呼ぶ。技術よりも、業務の視点でシステムを考えられるのがポイントだ。例えば在庫を考える場合、自社だけでなく、パートナー企業が抱える在庫も管理することで、効率化できる。各システム間をSOAで連携させる際は、ビジネスフローを定義、管理し、監視するコンポーネントである「Dynamic Enterprise Management」と、インタフェースになるOn Rampが中心的な役割を果たす。

 On RampはSOAで他システムと連携させる際の「入り口と出口」として機能するコンポーネント。システム間連携のしやすさに加え「On Rampを使っても追加費用が発生しない点がユーザーにとってメリット」(同氏)だ。これにより、異種混合システムの構築で常に問題になるインタフェースとコストの2点を解決した。

 例えば、アジア、欧州、北米にまたがるある企業は、買収で成長してきた経緯があったが、買収した各国の企業で稼働しているシステムをゼロから作り直すことはしなかった。各システムを残したまま、インタフェースだけ連携させ、在庫などの情報の可視化を実現したという。

 これに加えて、ゴードン氏は、日常業務でのERP利用を便利にするインタフェース周りの新機能をリリースすると話す。2009年の初旬に発売を予定しているのは各ユーザーの職掌別などで用意するダッシュボード「My Day」だ。バックエンドのシステムから吸い上げたデータを基に、自分が必要な情報や実施するべきタスクを表示するなど、社員にとって日常業務における窓口のような役割を担う。

 同じくユーザーの職掌別などの切り分けで、バックエンドから抽出したデータを分析する機能「My Analytics」も提供予定という。こうしたエンドユーザー向けの情報系ツールが充実することで、ERPが収集した膨大なデータから「顧客行動の特徴」などの価値ある情報を発掘できるかもしれないのである。

 「日本は製造業が多く、小規模から大規模まで生産管理を中心とするInfor製品が広く使われている」(ゴードン氏)。製造業は資材のサプライヤー、物流業者、卸売業者、小売店など特にパートナーを多く抱える業種といえる。他システムの取り込みを技術面、コスト面で容易にするInforの取り組みは、こうした製造業には特に合っているといえそうだ。

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