クラウドが勢いを増している。インターネットという雲にあらゆるものを置いてしまうというモデルは、特にシステム投資力の弱い中小企業にうってつけだ。ただ大企業が本格導入するには「サービス停止」というリスクの評価が必要になる。
クラウドモデルが勢いを増していることは疑いようがない。大企業の多くはまだサイコロを振る準備ができていないようだが、IBMやAmazon.com、Googleなどのビッグプレーヤーはすでにさまざまなサービスを提供している。新興企業はクラウディングコンピューティングサービスを利用してコストを抑え、国防総省やメジャーリーグなどの大組織は低コストでスケーラブルなサービスを活用している。
コンピューティングの未来を予想することは、天気予報よりはるかに難しい。あなたは会社の命運を「雲(クラウド)」に委ねることができるだろうか?
低コストで柔軟なクラウドコンピューティングの魅力とそのリスクを比較検討するITエグゼクティブに、いまその問いかけは重くのしかかっている。おそらクラウドコンピューティング導入を躊躇させる最大の理由は、サービス停止の恐怖だろう。IT部門やビジネス部門のマネジャーたちの間には、データセキュリティや法規制との兼ね合い、あるいはベンダーの事業継続性などに少なからぬ懸念があるようだ。
だが、つかみどころのない混沌としたコンセプトへの興味は、積乱雲の湿った空気よりも急速に発達しつつある。ベンチャーキャピタルも、小さな、風変わりな名前のスタートアップ企業の一群に大量の資金を降り注いでいる。長い伝統を誇るベンダーも、これはクラウド、あれもクラウド、と自社サービスの再編に躍起だ。あのデルでさえ、失敗はしたが、「クラウドコンピューティング」を商標にしようと考えたほどである。
クラウドコンピューティングの定義はさまざまだが、その特性としておおむね一致しているのは次のような点だ。
「Amazon Webサービス(AWS)」は、一般に典型的なクラウドサービスとして認知されている。Amazon.comが提供するアプリケーション開発用の「EC2(Elastic Compute Cloud)」と「S3(Simple Storage Service)」は、いずれもWebインタフェースが用意され、顧客は使用料をクレジットカードで支払うことができる。
Amazon.comは、それらのサービスを「SimpleDB」や「Simple Queue Service」「Flexible Payments Service」、そしてオンデマンド労働力を提供するサービス「Mechanical Turk」(現在はβバージョン)などで増強している。
2008年8月に、Amazon.comはEC2を「EBS(Elastic Block Storage)」で拡張した。EBSは、EC2インスタンスの終了後もストレージを維持できるようにするものだ。
こうしたサービスの展開に積極的なのは、なにもAmazon.comだけではない。検索大手のGoogleは、クラウドベースのアプリケーション開発プラットフォーム「Google App Engine」を提供している。また、英国ではホスティングプロバイダーのXCalibre CommunicationsがWeb上でセルフサービスの仮想専用サーバ「FlexiScale」を提供している。
「オンラインでサインアップするだけでいい」と、XCalibreのCOO、フィリップ・ハバー氏は説明する。「アカウントを作成すれば、1、2分でマシンをセットアップできる」
クラウドにはいくつか基本的なタイプがあるという点で、業界オブザーバーの意見は一致する。Forrester Researchは、クラウド市場を次の5つのカテゴリーにセグメント化した。
ただし、すべてのクラウドが商用クラウドコンピューティングサービスプロバイダーによって構築されているわけではない。ITプロフェショナルからいま最も注目されているのは、一般の企業がクラウド方式で従業員に自社のITリソースを提供するコーポレートクラウド、すなわち“イントラクラウド”である。
さらにコンピューティングクラウドの持続可能性を示すものとして、クラウドエコシステムの開発も進められている。その中でユーティリティベンダー各社は、クラウドのパフォーマンスをモニタするツールを作成し、クラウドアグリゲータはさまざまなクラウドサービスをパッケージ化している。
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