CRMの新潮流

WOWOW、横浜・沖縄・札幌のコールセンター業務可視化で一元管理多チャンネル時代の戦略

有料の衛星放送事業を手掛けるWOWOWにとって、コールセンターは新規顧客獲得の窓口として重要や役割を果たす。そこで電話で顧客と接するエージェントの動きを可視化し、管理者であるスーパーバイザーを楽にする仕組みを取り入れた。

» 2008年10月23日 08時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 有料の衛星放送事業を手掛けるWOWOWにとって、コールセンターは新規顧客獲得の窓口として重要や役割を果たす。放送の多チャンネル化が加速する中で、顧客からの問い合わせへの対応品質はますます「会員制ビジネス」の屋台骨になる。WOWOWはコールセンターを支えるエージェントの動きを可視化し、管理者であるスーパーバイザー(SV)を楽にする仕組みを取り入れた。WOWOWのコンタクトセンターを運営するWOWOWコミュニケーションズ、ICTシステムインテグレートサービス部門の小笠原徳夫氏に聞いた。

WOWOWのコールセンターの役割

WOWOWコミュニケーションズの小笠原氏

 WOWOWコミュニケーションズにとって、本社であるWOWOW向け業務は45%にとどまる。残りの55%は別の放送系企業や予約センター、金融業者などの企業のコールセンターとして仕事を受託している。中心拠点の横浜オフィスは250席を抱え、加入手続きやテクニカル案内、料金請求などに対応する。150席の沖縄と60席の札幌は主に加入手続きを手掛ける。各拠点間はIP網でつないでおり、フリーダイヤルによるコールは、一度横浜で受け、必要に応じて沖縄と札幌に振り分ける仕組みだ。IP-PBX、IVRなどは米Avaya製のシステムを利用している。

 今回導入したのは、各拠点で電話に応対しているエージェントの状態を色で直感的に分かるようにするソフトウェア「Avaya Agent MAP」。顧客との通話時間が長い、後処理に手間取っているなど、特定の状態にあるエージェントにアイコンで注意を促せる。座席を囲む枠線に新人は赤、ベテランは黄のように意味を持たせることもできるため、SVはコンタクトセンターの状況を把握しやすいという。

横浜、沖縄、札幌を一元的に把握

 小笠原氏は、導入前のコールセンターの状況について「SVがエージェントの様子が分からなかった」と話す。横浜拠点はフロアが円柱状になっているため、SVは建物の裏側にいるエージェントの姿が見えないという。沖縄は、フロアが4、5階に分かれているため、SVによるエージェントの一元的な管理は難しかった。

 Agent MAP導入後は、横浜、沖縄、北海道の3拠点全体のエージェントの様子が地図のイメージで表示され、「通話中は赤、待機中は緑」といった要領で一元的に可視化できるようになった。通話が長いオペレーターなどをSVがすぐに把握できるようになった。SVは右クリックするとエージェントと顧客の実際の会話を聞けるため、問い合わせ内容に応じてエージェントに指示を出せる。これにより、トラブル発生時などにもその場でSVが対処でき、コールセンター全体の効率性が上がるという。

 エージェントにも好評だ。従来は困っているときに「手を挙げてもSVが気づいてくれない」ことも多かったが、新ソフトにより助けを求められるようになった。結果として「エージェントの働き心地が良くなり、ストレスなどですぐに退職してしまうようなことが少なくなった」(小笠原氏)。

課題はSVとエージェントの双方向性

 不満もある。現状は、Agent MAP上でメッセージを出せるのは、エージェントからSVの片方向のみ。「SVからエージェントにもメッセージを出したい」という。「休憩に行って下さい」「(沖縄などの場合は特に)台風が近づいているので気をつけてください」といった指示も出しやすいからだ。現状は、Web上の掲示板でこうしたやり取りをしているが、ソフトウェアの方から変化を知らせるプッシュ型ではないので、リアルタイムの連絡は難しい。日本アバイアは「改善の要望に対応する予定」としている。

 Agent MAPの導入コストはライセンスやハードウェアおよびソフトウェアの費用などを合わせて「数百万円だった」(同氏)。「500席稼働していることを考えると安かった」と同氏は評価している。

 今後、2011年のアナログ放送の終了に伴い、情報システム全体を簡素化できると見込んでいる。現状は、アナログ放送とデジタル放送の両方向けに用意しているシステムも1本化できるからだ。デコーダ接続といったアナログ放送向けの取り組みも必要なくなるという。Agent MAP以外にも、現在は、基幹システムとして稼働させているAS/400ベースのシステムをUNIXベースのシステムに刷新する準備を始めたところ。多チャンネル時代の競争激化に備える。

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