ソフトウェア資産管理が経営にもたらすインパクトWeekly Memo

「ソフトウェア資産管理って何から始めればいいのか」――こんな企業の声に応えて、先週、ウチダスペクトラムが新サービスを発表した。その新サービスを通じて見えてきたものとは。

» 2008年10月27日 09時57分 公開
[松岡功ITmedia]

SAMアセスメントサービスが登場

 企業向けのソフトウェアライセンス販売を手がけているウチダスペクトラムが10月20日、企業のソフトウェア資産管理(SAM:Software Asset Management)への取り組みを支援するため、SAMに関する国際標準規格と国内管理基準に基づく現状分析と改善点の提示を行うコンサルティングサービス「SAMアセスメントサービス」を発表した。

 ちなみにSAMとは、企業など組織が保有するソフトウェア資産を、ソフトウェアのライフサイクルを通じて効果的に管理・保護するための基盤とプロセスのことである。

 同社では同時に、これまで個別に提供してきた複数のSAM関連サービスを総合サービスとして体系化。そのSAMサービス体系の柱となるSAMアセスメントサービスは、企業のリスク管理の観点から、ライセンス所有状況や購入実績などを証明できるアカウンタビリティ(説明責任)の確保、違法コピーなどの法的リスクの回避、TCOの削減を目的に、ソフトウェア資産管理に関する成熟度についての現状を把握し、その改善点の提示を行うものだ。

 発表会見に臨んだ同社の町田潔社長は、SAMが求められるようになってきた背景について、「企業にとってIT化の進展に伴ってソフトウェアへの投資が増大する中で、無形のソフトウェア資産をいかに有効に管理するかが課題となっているが、これまでは管理手法が十分に確立されていなかった。さらに最近では内部統制への対応からも、企業としてのSAMへの取り組みが求められるようになってきた」と説明した。

新サービスの発表会見に臨むウチダスペクトラムの町田潔社長(右)とマーケティンググループの紀平克哉 執行役員

 SAMは、2006年5月に策定された国際標準規格「ISO/IEC 19770-1」と同規格をベースとした国内管理基準「ソフトウェア資産管理基準Ver2.0」を網羅した13の管理目標に対する100を超える管理項目について実施が求められている。

 SAMアセスメントサービスはこれに対し、質問票の回答とユーザーへの直接のヒアリングをもとに、各項目を6段階のレベルに分けて客観的に評価を行う。そして各項目の評価レベルをもとに、ユーザーのソフトウェア資産管理に関する成熟度合いを「SAM環境の整備」「SAMトレーニング」「管理台帳の整備」「照合・是正の定期実施(棚卸し)」「ソフトウェア調達の効率化」の5つの評価ポイントについて総合的に判断し、リスクの洗い出し、充足する事項および改善点の報告を行う仕組みとなっている。

企業の資産価値に直結するソフトウェア資産

 町田社長に続いて発表内容の説明に立った同社マーケティンググループの紀平克哉 執行役員は、「SAMアセスメントサービスは、SAMの必要性に対する認識が高まってきた中で、具体的に何から始めればいいのか、どう取り組んでいけばいいのか、というお客様の声に対応したもの」と語り、「同時に体系化したSAMサービス群によって、お客様がSAMをマネジメントシステムとして構築する際の具体的な解決策を提示できるようになった」と総合サービスの展開に自信をのぞかせた。

 同社のSAMサービス体系は、今回発表したSAMアセスメントサービスを含めて7つのサービスからなる。他の6つは、ソフトウェア資産の管理手順についてのアドバイスを行う「SAMプロセスコンサルティング」、eラーニングによる教育サービス「SAMトレーニングプログラム」、ソフトウェア資産管理に関する総合情報サイト「SAMポータル」、ソフトウェア購入プロセスの標準化を行う「Webプロキュアメントシステム」、所有ライセンスの内容と契約状況を一括管理するレポートサービス「My Asset Reporter」、ソフトウェアのインストール状況を把握する「SCCM棚卸支援サービス」である。

 ちなみにSCCMとは、マイクロソフトのソフトウェア資産管理ツール「System Center Configuration Manager」の略で、ウチダスペクトラムはその棚卸支援サービスにおいて、マイクロソフトと協業している。これら7つのサービスは、来年に提供開始予定のSAMプロセスコンサルティングを除いて、すでに提供されている。

 同社のSAMサービス体系で注目されるのは、各サービスをマネジメントサイクル(Plan-Do-Check)に当てはめると、SAMアセスメントサービスが「Check」、SAMプロセスコンサルティングが「Plan」、他の5つが「Do」に位置付けられることだ。つまり、同社のサービス体系を採用すれば、SAMのマネジメントシステムを構築できるわけだ。これをして町田社長は、「SAMにおいてDoのみならずCheck-Planの領域までサービスを提供するのは、国内では当社だけだと認識している。この点が競合他社との最大の差異化ポイントだ」と強調した。

 では、こうしたSAMへの取り組みが企業経営にもたらすメリットとはどのようなものか。

 「経済面、リスク対策、運用面の3つの側面でメリットがある。まず経済面では、未使用ライセンスの活用やライセンス購入方法の統一化によるコスト削減が大きく見込める。リスク対策では、アカウンタビリティの確保やコンプライアンスリスクの軽減、強固なセキュリティの構築を行うことができ、社会的信用の失墜防止につながる。そして運用面では、ソフトウェア調達窓口の集約化や資産の最適化、事業統廃合時の迅速なIT統合に効果的だ」(紀平 執行役員)

 とくに事業統廃合時などでは、ソフトウェア資産が企業の資産価値そのものをグッと高めることになったケースも少なくないようだ。考えてみるとそれは当然。企業にとってソフトウェアは単なるツールではなく、もはや貴重な業務ノウハウと化している。

 そう捉えると、今後SAMが経営にもたらすインパクトは、計り知れないほど大きい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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