ITIL V3では、資産を「価値を創出するための基盤」であるとしている。言い換えれば、サービスを提供するために必要なもの、ということになる。サービスを提供するために必要なものは、すべて資産である。そのため資産のことを「サービス資産」と呼ぶ場合もある。
では具体的に、資産とは何なのか。まず特徴的なのは、資産を「リソース」と「能力」という2種類で語っている点である。そしてそれらの資産を構成する要素は全部で9つあり、便宜的にA1〜A9までの記号が付与されている(図1)。
分かりやすいのはリソースだろう。リソースは、価値を創出するために直接的に働きかけ、消費されるものである。具体的には次のものが含まれる。
まさに「ヒト、モノ、カネ」に当たる部分である。モノは、インフラストラクチャ(ハードウェア)、アプリケーション(ソフトウェア)、情報(ITサービスが扱うコンテンツ)であると定義している。
ここは、ITガバナンスのフレームワークであるCOBITと整合性をとったようにも見える。COBITでは、IT資産は「インフラストラクチャ、アプリケーション、情報、要員」であると述べている。それにカネ、すなわち金融資本(ITIL書籍の中では『財務資産』と書かれているところもあり、統一されていない)が加わったものであるとも解釈できる。
このリソースという概念は、多くの人にすんなり受け入れられるだろう。最適なリソースが用意されることで、最適なサービスを提供でき、最適な価値を創出できる。リソースが欠如していると適切なサービスを提供できず、従って最適な価値を創出できない。
より重要(というか、ITILらしい側面)なのは、能力である。能力とはリソースを価値に変換するために使われるものである。具体的には次のものが含まれる。
能力単体では価値を生み出せない。しかし、もし潤沢なリソースがあったとしても、そのリソースを調整、コントロール、展開するのに必要な能力が欠如しているのでは、適切な価値を創出できない。
能力は時間をかけて開発されるものである。また、経験と学習によって蓄積されるものである。もし同程度のリソースを持つ2つのサービス・プロバイダがあれば、両者はそれぞれが持つ能力によって差別化されるだろう。
能力を示すそれぞれの要素が具体的に何を表しているのか、ということはある程度想像できるが、念のために詳しく見てみよう。
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