ITは金食い虫?――資産を「リソース」と「能力」に分類してみる差のつくITIL V3理解(3/4 ページ)

» 2008年11月11日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]

資産として能力を評価する指標

 ここから、能力という資産に含まれる要素を詳解する。

 「管理」、つまり管理能力とは、企業や会社、組織、およびそこで働く人を1つの方向に向かわせる仕組みのことである。これにはリーダーシップ、運営方針、報奨、罰則などを含む。ほかのすべての資産をはぐくみ、調整し、コントロールする能力である。管理は、意外にも属人的である。組織の管理能力を高めるための最も手っ取り早い方法は、特定の管理の仕組みの定義と構築に活躍した個人を雇い入れることである。

 「組織」、つまり組織能力とは、人材やプロセス、アプリケーション、インフラストラクチャといったほかの資産が効率的に活動するための構成(カタマリ)である。組織には、上限関係のある階層構造、グループ、チーム、個人が持つ社会的なネットワークといったものが含まれる。人材という資産が個々で活動するよりも、組織を組んでいた方が効率的で効果的になる、という面もある。一方、多数の資産が集まるとそこに利害関係が生まれる場合もある。その利害関係の調整を行うのも、組織の役割である。

 ITIL V3では「プロセス」を「特定の達成目標を実現するために設計された、体系的な一連の活動」であると定義している。プロセスには必ず1つ以上のインプットがあり、活動の結果としてのアウトプットがある。また、アウトプットを確実に提供するために必要となる役割や責任、手段といったものが含まれる場合もある。また、プロセスには必ず目標があるので、その目標を達成したかどうかという指標の定義もまた重要である。

 「ナレッジ」とはすなわち、知的財産のことである。知的財産には発明、発見、情報、洞察、経験、意識などが含まれる。人材は経験やスキル、才能といったナレッジを個々に蓄え持つ。ナレッジは経験と学習により獲得される。

 多くのナレッジは、持っているかどうかが数値化できない、あるいは体系化できない暗黙知である。暗黙知は継承が難しく、また失うのは簡単である。ナレッジを資産として蓄え、継承するためには、プロセスやインフラストラクチャ、アプリケーションなどに組み込むことで明示し、体系化する必要がある。

 「人材」を能力という側面で見た場合、その多くはスキルのことを指す。個人の創造性、分析力、学習力、判断力、リーダーシップ、コミュニケーション能力、協調性、調整力、果てはカリスマ性や信頼度といったものまでが、ここに含まれる。これらの能力は、概念的なもの、技術的なもの、そして社会的なものに分けられる。

 わたしも書いていて気付いたが、これらの能力は互いに独立して存在しているわけではない。例えば人材という資産は、管理、組織、プロセス、ナレッジすべてに深く関係している。これらの能力を創造するのも人材という資産であるし、それらの能力が蓄積されている場所もまた、人材という資産である。

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