金融危機とIT経営伴大作の木漏れ日(3/4 ページ)

» 2008年11月14日 08時00分 公開
[伴大作(ICTジャーナリスト),ITmedia]

二極化するユーザー

 上記のような例は外部要因が情報システム部門に悩みを強いる典型的な例だが、内部的な要因も無視できない。企業が抱える情報そのもの絶対量が爆発的に増加した。特に上記クライアントPCの増加とインターネット接続で企業のサーバには質、量ともに大きな変化が起こった。

 わたしがエンドユーザーに着目してかれこれ15年になると記したが、その長いスパンでコンピュータユーザーを眺めていると「十年一昔」という言葉がついつい頭をよぎってしまう。昔なら、企業内にある端末の数は限られていて、当然ながらホスト上で動くアプリケーションも通常業務に限られていた。いわゆる基幹系処理だ。会社の定時を過ぎればファイルのメンテナンスやシステムの改変に充てる時間的な猶予があった。

 しかし、時代が下り、ビジネス環境の劇的に変化、深夜、終夜営業は当たり前、加えてグローバル化の影響で常にコンピュータは止められない時代がやってきた。悠長なことなど言っていられない。

 加えて上記のように社内のホストへ接続する端末の飛躍的な増加はホストサーバに対する負荷増大、高性能化、高信頼性を求められるようになった。もちろんこの間、高性能サーバの性能や信頼性は一層高くなり、価格は急速に低下した。扱うデータの総量も飛躍的に増加した。この結果、情報システム部門の管轄外にある中型小型サーバの出荷数が著しく増加した。これも、情報システム部門に一層大きなストレスをもたらした。

 このような状況は、ICTの利活用に熱心な企業(IT部門が優秀な企業)にとって恩恵を十分享受できる結果を生んだ。一方、投資にあまり熱意を持たなかった企業は、企業業績(売上高や利益)があまり向上せず、結果的にあまり業務処理は増加しなかった。そのような企業でも、メインフレームに代表される大型サーバの更新は定期的に行われる。そのような企業ではコンピューティングパワーという面では常に「オーバースペック」である状況が続く結果となった。

 これは、先進的な企業と一般企業で、情報処理部門の知識あるいは活用レベルの格差をさらに拡大させ、二極化する結果を招いた。

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