EC研究会が2008年の「日本オンラインショッピング大賞」を発表した。受賞サイトの共通点は、専門的な商品ラインに特化してビジネスを展開している点だ。
EC研究会は11月14日、B2Cの電子商取引(EC)サイトを運営する個人や会社を表彰するイベント「日本オンラインショッピング大賞(OLS大賞)」の授賞式を開催した。サイトコンセプトを確立し、独自性のある商品を提供するなど勝ち残るECサイトの条件が見えてきた。
受賞したのは、印鑑の通信販売専門サイト「ハンコヤドットコム」を運営するハンコヤドットコム、味に問題はないが傷などのため正規品として販売できない北海道の物産品を販売する「北海道わけあり市場」運営の北海道・シー・オー・ジェイピー、オーダーメイドの犬用首輪を扱うサイト「ドッグキャッチ」運営のドッグキャッチ、年賀状などの挨拶状の受注から印刷をする「挨拶状ドットコム」を運営するにっこう社の4社。共通するのは、各社とも専門的な商品ラインに特化している点だ。
例えばハンコヤドットコムは印章に特化した20の販売サイトを展開している。藤田優社長は「はんこはもともとニッチなものだが、もっとニッチな方向に掘り下げた方が購買意欲をあおるのではないかと考えた」と、現在のはんこの種類やターゲットごとにWebサイトを展開するようになったいきさつを話した。
ドッグキャッチが販売する首輪はハーフチョークと呼ばれるもの。首輪の半分が鎖、残り半分が皮でできている特徴のある形だ。オーダーメイドでこの形の首輪のみをオンラインで販売している。
専門特化以外にも、その分野の中でもオリジナリティを持つことも共通した特徴といえる。挨拶状ドットコムは他の印刷業者と差別化を図るため、年賀状のデザインを500種類以上そろえている。北海道の物産品を取り扱うECサイトはほかにも多数あるが、「ワケあり商品」に特化した独自性が北海道わけあり市場の特徴といえる。
同イベントの実行委員長を務める早稲田大学IT戦略研究所所長の根来龍之教授は、これらの4サイトが模倣困難という共通の特性を持っていると指摘する。「ほかの会社が模倣できない商品を扱うことで利益を確保する」(根来氏)特性だ。
「大企業では独自の強みがないと成功しないし儲からないとよくいわれる。しかし、小企業は最初からそれを持ち合わせているわけではない」と根来氏。最初は小さな強みしかなくても、事業を継続しながら大きくしていく姿勢を持っていれば模倣困難なものを作れるとする。「儲け方やブランディングのやり方のモデルを考えることも重要だが、ビジネスにおいて強みを大きくするために学習することも必要」という。
「今回の受賞者は、長年のノウハウを蓄積しながら強みを育ててきていることが分かる」(根来氏)と指摘する。そのノウハウが、模倣困難さの確立や収益性につながるという。「事業を続ける中で自社の強みを生かすために会社を鍛えていくという考え方が必要ではないか」(同氏)
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