「伝説の営業マン」のノウハウを定着させる社内SNS・Blog活用術(1/2 ページ)

英会話やダイエットと並び、「挫折産業」の1つとされるナレッジマネジメント。企業の永遠の課題ともいえる情報・知識共有の実現に、社内SNSやイントラブログは本当に役立つのだろうか。失敗事例と成功事例から、使い方、考え方のコツを探ってみる。

» 2008年11月25日 14時58分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

暗黙知を「書き残す」行為で顕在化

「知識や情報を可視化・蓄積する部分にブログ・SNS・wikiの各機能が有効」と語る日立システムアンドサービスの松本匡孝氏

 「社内の情報・知識共有基盤にブログやSNSを選択し競争力を強化させる企業が増えている」と語るのは、日立システムアンドサービスのプロダクトソリューション企画部で主任技師を務める松本匡孝氏。

 11月13日に開催された同社のプライベートセミナー「第32回 Prowise Business Forum企業の人的資源を引き出す社内SNS/Blog活用術」の講演で松本氏は、ナレッジマネジメントではすっかりとお馴染みとなった「SECIモデル」を引き合いに出し、従来のグループウェアや文書管理システムでは埋もれたナレッジを表出化できなかった理由について説明した。

 SECIモデルとは、組織内の知識構造を、共同化、表出化、連結化、内面化の4つのフェーズで知識変換を繰り返して、暗黙知を形式知化し、ナレッジマネジメントが形成されていくというもの。グループウェアは利用目的を特定し、伝達型のコミュニケーションによって組織階層・アクセス権を主体にコンテンツを分類して高度な管理を実現するものであり、特に連結化の部分で、膨大な文書をデータベース(DB)化し管理・検索を行うという。

 一方、共同化から表出化を実現するのに有効と考えられているのが、社内SNS、イントラブログ、あるいは社内wikiであるという。暗黙知のまま埋もれていたナレッジが「書き残す」という行為により顕在化し、さらにコメントやトラックバックによってアイデアが徐々にブラッシュアップされていき、一つの形式知に変わっていく。テキスト化と同時にコンテンツは関連づけ・カテゴライズされて活用可能な形式で知識が蓄積する。松本氏は、「SNS・ブログ・wikiは、企業知の創造と活用を得意とする技術」と断言する。

図1 SECIモデルにおける、社内SNS・イントラブログとグループウェアとの棲み分け(出典:日立システムアンドサービス)

失敗要因はツールへの過度な期待と利用イメージの欠落

 しかし、社内SNSやイントラブログを業務に追加することで暗黙知を共有することが本当に可能なのか。その疑問に対し、松本氏はいくつかの失敗例と成功例を示して具体的に解説した。

まずは失敗事例から。製薬メーカーA社は、営業ノウハウの共有と蓄積、営業マンへの医薬情報のタイムリーな配信を目的に、2006年10月からイントラブログを営業と管理部門の500名を対象に導入。当初は、対象となる社員の60%のユーザーが登録し、アクティブユーザーも4割を超えていたが、導入1年後にはアクティブユーザーが2割以下に低下。理由は、実際に使われていたのが子育てサークルや日記など業務以外での利用が主となり、上司が勤務時間の利用を制限したため、次第に利用されなくなってしまったからだった。

 ツールを導入すれば活用されるという過度な期待がったことや、ユーザーが具体的な業務利用をイメージできなかったこと、さらには業務設計やテスト期間を経ずに稼働させてしまったことなどが失敗の原因だったという。

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