無線LANの電波の伝搬を測れ計る測る量るスペック調査隊(2/3 ページ)

» 2008年11月28日 02時00分 公開
[東陽テクニカ,ITmedia]

電波の伝搬を測る

東陽テクニカ テクノロジーインタフェースセンターと実験に使用した教室

 それでは、実際に無線LANで使用する電波がどのように伝搬するのか、測定を行ってみよう。今回、実験は東陽テクニカのテクノロジーインタフェースセンター(写真1)で行った。このビルの6階はネットワークトレーニングセンターとして利用され、2つの教室がある(図1)。このうち、図面上で左側の教室内にAPを設置した。教室内には机が並べられているので、その机の1つにAPを2つ、並べて配置する(写真2)。これらは同じ製品*であるが、出力の設定を変えてある。片方(以後、AP1と呼ぶ)は「100%」(デフォルト値)であるのに対し、もう片方(以後、AP2と呼ぶ)は選択できる最小の出力設定値である、「25%」に変えてある。これらのAPはともに1chを使用するように構成してあり、パッシブサーベイでは1chのみモニタするようにAirMagnet Surveyを設定した。

図1 図1 実験に使用したフロアの間取り

サーベイ方法による測定結果の違い

 まず、APの置いてあるフロアでAP1とAP2に対してそれぞれアクティブサーベイを実施し、その後パッシブサーベイを行った。この測定結果を図2、3に示す。この測定結果では色彩で信号強度を示しており、信号強度が強いときには青、弱くなるにつれて緑→黄→赤となるようにAirMagnet Surveyを設定した。測定の結果、AP1ではAPの位置を中心としてフロアの半分以上が青で示されるの対し、AP2ではAPの周辺のみが青で表示されていることが分かる。

図2 図2 アクティブサーベイの結果
図3 図3 パッシブサーベイの結果

 また、AP付近の-30dBm*を最大として、APから離れるに従って信号強度が落ちている様子も確認できる。特にフロアマップ左の、エレベーターホール周辺では急激に信号強度が落ちているが、これはエレベーターに使用される鉄筋*などによって電波が通過しづらくなっているのが原因である。一方、教室の壁などの薄い壁では、ほとんど減衰なく電波が通過していることも分かる。

 次に、アクティブサーベイとパッシブサーベイを比較してみよう。すると、アクティブサーベイでは濃い青で表示されるエリアがパッシブサーベイと比べて広いことが分かる。

 信号強度の測定方法は、アクティブサーベイではAPに向けて送信したテストフレームに対するACKフレームの信号強度を、パッシブサーベイではAPからのビーコンフレームの信号強度をそれぞれ測定している。本来であればどちらの測定方法でも同一の結果が得られるはずだが、今回の実験ではIEEE802.11b/gの両方を対象としているため、ビーコンフレームがIEEE802.11bで送信され、ACKフレームはIEEE802.11gで送信されるという理由で結果が変わってしまうようだ。いずれの方法でもAPから発信されるフレームの信号強度測定を行っているので、測定結果の違いは本質的なものではないと考えられるが、傾向としてはアクティブサーベイの方がパッシブに比べて信号強度が強めになるという結果となっている。

信号強度と伝送レート

 続いて、アクティブサーベイで測定した信号強度と、使用されるフレーム伝送レート*の関係を見てみよう。アクティブサーベイではAPに対してフレームを送受信することで、無線LANのパフォーマンスに大きな影響を及ぼす要素である、フレームの伝送レートや再送の比率なども測定できる。

 測定結果(図4、5)を見てみると、AP1ではフロアの6〜7割の場所でIEEE802.11gの最速伝送レートである54Mbpsで通信できており、これは信号強度が青で示される、強い信号強度のエリアとおおむね一致する。フロアマップ左側のエレベーターホールなど、一部のエリアでは若干遅い36Mbpsとなる部分があるが、ほとんどの場所でかなりのスループットが期待できそうである。一方、出力を落としてあるAP2を見てみると、教室内はおおむね48Mbpsあるいは54Mbpsの高速な伝送レートを維持しているが、エレベーターホールなどエリアの周辺領域では18Mbps以下という、遅い伝送レートとなっていることが分かる。そのため、これらのエリアでは当然高いスループットは期待できない。信号強度と伝送レートを比較すると、これらのエリアは黄色で示される信号強度-75dBm以下のエリアと重なっており、フレームの伝送レートと信号強度の間に密接な関係があることが分かる。

図4 図4 AP1の信号強度と伝送速度
図5 図5 AP2の信号強度と伝送速度

このページで出てきた専門用語

同じ製品

バッファローのWHR-HP-G54/P。IEEE802.11bおよび11gに対応している。

dBm

電力の単位。設定した0dBmを基準とした信号レベルを表す。

エレベーターに使用される鉄筋

一般に金属は電波を遮断するため、それにより信号強度が低下する。

使用されるフレーム伝送レート

IEEE802.11a/b/gなどの無線LAN規格では、電波状況に応じてフレーム伝送レートを変えることでより確実な通信を行えるようにしている。フレーム伝送レートを遅くすれば確実性は増すが、当然スループットは低下する。


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