いま考えたい――子どもにケータイは必要かネットの逆流(5)(2/2 ページ)

» 2008年12月07日 10時55分 公開
[森川拓男,ITmedia]
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 しかも、ケータイやネットを利用したいじめの場合は、教師など外部の人間による把握が非常に難しくなる。「学校裏サイトチェッカー」が公開されたが、これとて万全ではない。

 ケータイのマイナス面はそれだけではない。出会い系から援助交際に発展したり、事件に巻き込まれたりするケースもある。先日は、ドラッグストアで医薬品を万引きし、それを転売するという事件が発覚したが、万引き実行役の少年は、ケータイ闇サイトで集められている。

 子どもたちが被害にあうケースでは、相変わらず減らない盗撮。最近でも、東京家庭裁判所の事務官が、女子高生を盗撮したとして逮捕された。

 また「有料サイトの料金が未納になっている」という名目でお金を詐取する事件も後を絶たない。子供が引っ掛かった場合は、親にバレたら怒られると思って、お金を振り込むために新たな犯罪を起こしてしまうケースがでてくるかもしれない。ケータイは便利なものであるが、同時に危険なツールにもなる。ケータイフィルタリングもあるが、それだって完全とはいえないだろう。

 しかし、すでに子供たちの社会の中に、ケータイは深く入り込んでしまっているのだ。いくら学校で禁止しても、子どもたちが学校の外に出た瞬間にケータイに依存するな状況では意味がない。いじめに悪用する子どもがいるならやめさせる必要がある。

 ただ「使うな」「禁止」というのではなく、「なぜ、学校で使ってはいけないのか」「何をしたらいけないのか」などといった「ケータイ教育」を、学校および家庭でする必要に迫られているのだ。親は安易に携帯電話を与えるのではなく、使い方のルールを明確にし、違反したら取り上げるくらいの家庭教育をしなければならないのだ。

 河村官房長官は、12月4日夕の記者会見で橋下知事の方針に触れ、「子どもたちの安心安全の問題は、解決方法が考えられるのではないか」と述べている。保護者が、子供の安全の意味で携帯電話を持たせている場合は、携帯電話ではなく別の方法を考える時期にきているのかもしれない。ケータイ依存の状態は子どもにとって、良い状態ではない。

携帯電話の新しい可能性

 携帯電話のマイナス面を取り上げてきたが、もちろんユーザーが発展させている新しい可能性もたくさんある。

 最近は「ケータイ小説」「ケータイコミック」といったものが若者を中心に流行しているが、ケータイコミックスに「音楽」が加わった「うたコミ」なるサービスも開始された。新しいメディア展開として注目される。ケータイカメラからQRコードを読み取ることで、さまざまなサービスを受けられるようになってきた。携帯電話サイトと連動することで、モデルが着用する服を会場で見ながら、すぐに携帯電話から注文できるというファッションショーも開催されている。

 学生に絡んだ内容では、携帯電話のメールを活用した就職支援を実施する大学が出てきた。企業説明会や求人情報などといったものを携帯電話メールで配信することで、きめ細やかにサポートするというのだ。キャリアやコンテンツ提供企業にこうした発展を期待したいところだ。だが、子供への影響にも配慮する必要がある。携帯電話の利点と欠点は、コインの裏表のように常に対として存在しているのである。

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