耐えながら攻める――アウトプットを最大化する情報基盤「2009 逆風に立ち向かう企業」カシオ(2/2 ページ)

» 2009年01月07日 08時00分 公開
[聞き手:大西高弘,ITmedia]
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確かに厳しい環境だが、チャンスでもある

ITmedia ここまで話していただいた取り組みを踏まえて、厳しい環境下でのIT部門のあり方についてどう考えていますか。

矢澤 メーカーの役割は「良い商品」を作ること。それを支えるのがITの役割です。どう支えるのかというと、やはり仕事の効率化を進めるということですね。生産部門の効率化、自動化は相当に進んでいても、事務部門全体では非効率な部分はまだまだたくさんあるのです。それからコミュニケーションの効率化も重要です。その際インターネット技術が鍵となると思います。

ITmedia 事務部門とコミュニケーションの効率化をそれぞれ進めていくと。

矢澤 それぞれを個別に進めていくというのでは、また部分最適になってしまいます。両方を包括的に考えていく必要があると思いますね。そうでなくては一気通貫のシステムは作れない。これからは常に「全体のあり方」という視点で考えていく必要があります。プロセス全体の最適化とは何かを考えるということですね。例えば当社もCRMを導入していますが、これは営業担当者の行動レベルを最大化し、最適化させる目的があります。しかし、そこにコミュニケーションの最適化という発想がなければ、なかなか実現できないと思うのです。

ITmedia 全体最適という発想が大切ということは分かっていても、つい、考え方が部分最適に向かってしまいがちになるのですね。それから、効率化だけでなくパフォーマンスの最大化という視点も欠かせないですね。

矢澤 アウトプットをどのようにして最大化させるか。これも効率化と同時に意識していく必要があるのではないでしょうか。

ITmedia 守りながらも攻めるという姿勢ということでしょうか。効率化が守りだとすれば、アウトプットの最大化は攻めだと。

矢澤 守りがしっかりしていなければ、攻めもうまくいかない。バリューチェーンの最適化がなければ、ビジネスのスピードアップもかなわないわけです。円高が進んでいけば、それだけで業績は圧迫されます。それを跳ね返すにはどうするか。わたしは良い商品と全体の効率化こそが最大の武器になると思います。もちろん逆風を跳ね返すのは容易ではないはずですが。しかしそれは他社も同じことです。現場の常識を変えてしまうぐらいの改革をした企業だけが生き残れるのではないか、そんな感じを持っています。痛みに耐えながらも攻める姿勢が求められるのでしょうね。IT部門としては大きな投資はできないかもしれませんが、基盤づくりはほぼ完成したので、今度はそれをいかに活用して改革を進めていくかということになると思います。

ITmedia 例えば、欧米の企業と比べて日本企業は効率化とアウトプットの最大化はまだまだと思いますか?

矢澤 米国の企業などは90年代に苦しみながら、そうした改革を進めてきたわけです。IBMなどがその典型ですね。個人的には日本企業は商品は強いけれど、改革はまだまだなのではないかと思います。IT部門は商品づくりに直接タッチするチャンスはあまりないですが、本質的な業務改革という面では、大きな力になるはずだと思います。例えば顧客のニーズが変化する中で、いかに顧客との接点を構築するかといった課題を解決するにはIT部門がしっかりと対応していく必要があります。苦しい状況であっても変革を進めるチャンスという考え方もできるわけです。

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