景気後退期に生まれる新しいビジネスを支えていく「2009 逆風に立ち向かう企業」弥生(1/2 ページ)

業務パッケージソフトで知られる弥生株式会社。景気後退が叫ばれる中「今年は楽しみでしょうがない」と言う岡本浩一郎社長に話を聞いた。

» 2009年01月09日 08時00分 公開
[聞き手:横田貴司,ITmedia]

 業務パッケージソフトで知られる弥生株式会社。中小規模の企業や起業家を中心に着実にユーザー数を伸ばしている。2008年4月に新たに就任した岡本浩一郎社長に2008年を振り返り、今年の展望を語ってもらった。

ITmedia 2008年は世界的な金融不安や景気後退など、大きく揺れた1年でした。今振り返ってみるといかがですか。

岡本 世間では「どこを見ても真っ暗」的な論調もありますが、当社に関していえばそこまで売れ行きが落ちているわけではありません。12月に新製品を発売しましたが、決して手ごたえは悪くないです。

 わたしたちが提供している製品を利用していただいているお客様は中小企業や個人事業主の方が中心となっています。価格も、1パッケージあたり4万円前後ですので、1件あたり何百、何千万円というようなシステムを販売しているベンダーとはインパクトの出方は違っているのではないかと思います。もちろん、今後の景気動向に対しては慎重に対応していくつもりですが、決して悲観的な見方だけをしているというわけではありません。

弥生の岡本浩一郎社長

ITmedia 堅調に進んでいるようですが、その中で弥生の強みとは何でしょうか。

岡本 中小規模の事業所での会計ソフトの導入はその多くが更新事業ではなく、新規の取り組みです。ある程度の規模以上の企業で会計システムを入れていないところはまずありませんが、わたしたちのお客様には、紙の出納簿からの乗り換え、というケースも多くあります。ですので、「とりあえず今あるもので十分なので、しばらく更新を待とう」というのではなく、会計ソフトを本当に必要とし、新しく導入する方が多いのです。

当社の製品に興味を持って下さる方は、業務上でやりたいこと、改善したいことを持っています。その実現をお手伝いするのがわたしたちの使命です。基本的なことですが、このようにユーザーの立場に立つということが、今後よりいっそう大切になるのではないでしょうか。

ITmedia ユーザーの立場を理解するために、心がけていることは何でしょうか。

岡本 ユーザーのあり方は当然変化しています。最近感じるのはお客様の裾野が広がっているということです。これまではPCのことをある程度分かっている方が比較的多かった印象がありますが、近年はより幅広い層のお客様にご利用いただいています。まず大切なのはこのユーザー層の広がりを意識することでしょう。

 また、、わたしたちがパッケージベンダーであることが、ユーザーのことを考える際の基本事項になります。ベンダーの立場からすると、パッケージ製品には自分たちのプランに基づいて、じっくり開発を進められるというメリットがあります。ユーザーとやり取りをしながら開発を行うのに比べ、自分たちのやりたいことや「こうすれば良くなる」と考えたことを自由に盛り込んでいけることが最大の利点です。

 しかしながら、気をつけなければいけない点もあります。これは先ほど述べたメリットのちょうど裏返しになるのですが、自由に開発を進められる代わりに、実際に製品を使ってくださるユーザーの声が、どうしても聞きづらくなってしまうのです。

 弥生製品は完全なシュリンクパックで提供させていただいています。カスタマイズを前提としたSIの場合は、ユーザーの要望を聞き取りながら開発を進めていきますが、当社の製品はそうではありません。開発側がユーザーの声に直接触れる機会が少ないため、ユーザーのニーズ理解のための努力は意識して行う必要があります。

 実は、以前わたしが経営していた会社では弥生製品を使っていました。わたし自身がユーザーとしての経験を持っているわけです。そのときの経験から言うと、毎年製品の改善は行われていますが「こうなればもっといいのに」と思ったこともありました。これからはユーザーのニーズと製品に実装された改善の差を縮めていくこと大切になると考えています。

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